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木も見て森も見たい(1)~自治体財務データから見えるもの

自治体財務データを眺めていくと何がみえるのか。連載テーマ「木も見て森も見たい」第一回をお送りします。

自治体財務データをいじる

唐突ですが、全国の自治体の皆さんは、住民の期待を一身に背負って、日々大変お忙しく過ごしていらっしゃるでしょう。子育て支援策や高齢者向け施策の充実・継続から、保有する多くの公共施設の長寿命化など、政策課題が目白押しです。そんな中、財政拡張的な施策は歓迎され易いものの、縮小均衡的な施策は多くの人が望まないでしょう。そんな生活が今後も続けば良いのですが、自治体の中には基金の取り崩しで凌いだり、今すぐではなくても、数年後には財政的困難が予想されている、そんな状況にいらっしゃる団体が有るかも知れません。

そんな時、現在の支出内容が将来的に持続可能かどうかは、(当たり前ですが)将来の歳入との関係で決まってくる。首長さんや住民の方は「だったら歳入を増やせ」と仰るかも知れませんが、でも増税は嫌だと。ならば「稼げる行政」の標語を掲げて、企業誘致や産業振興に勤しんで頂く。また、人口を増やさねば、ということで、移住・定住・交流人口、兎に角、あの手この手で、人口増に向けて惜しまず努力されている訳です。もちろん、そのご努力には頭が下がるのですが、これまで平等主義・均霑(きんてん)主義・模倣主義を旨としてやって来られた公共団体の方には、急に「差別化戦略」に転換しようとしても、少々時間が掛かるのかも知れません。

因みに「稼げる公共」というのは、若干の語義矛盾がある気がします。公共サービスで本当に稼げるのであれば、その様な事業はビジネスとして民間にやって貰えば良いと思うのですが。「いや、儲かるけどそれは公共にしか出来ない種類のビジネスなのだ」ということであれば、それは公共だけが持つ「独占力」を背景に民間の参入を阻むビジネスモデルを作っている訳で、そこで儲けて良いのかという・・、また別の話が出てくる気がします。そこには公共財と私的財の境界問題があるかも知れません。

それは兎も角、その様な状況下で、今後の歳入見積を歳出のトレンドが上回る事が見越されるのであれば、残念ながら歳出を削るしかない。歳入の天井を突き破ってしまう訳ですから、それはまずい。では、削ると言ってもどこから手をつければ良いのか、見通しを立てる必要がある。

削減対象の絞り込みやその具体的手法については、簡単では無い事が容易に想像されます。がしかし、今後全ての政策・事業を「聖域」として温存することも難しい。また、実際の削減手法については、個々の事業内容によって具体的な打ち手が全て異なるはずです。なので、この手の問題を考えて行く上では、全体的な状況を俯瞰しながらも、細部に目を配る必要もある。まさに、自治体で財政課の方がやっておられる様な作業が必要になるでしょう。細かいデータから大きいデータまで、その粒度について、あるいは切り口について、自由な往来・交通が出来る様なツールが有ると助かるのではないでしょうか。

この様な観念的な話ばかりでは「お前は何を言いたいのか」ということでお叱りを受けるでしょうから、少し具体的なデータを見ながら、でも架空の事例でお話をさせて頂きます。何をやりたいのかというと、自治体の皆さんのお手元にある会計伝票データと公会計ということで「一体何に使うんだろう」と思いながらお作りになっている固定資産台帳のデータを眺めながら、仮にウチで歳出にメスを入れて行くとした場合、どんな感じでデータを眺めていくか、そんな問題意識になります。

昨今、固定資産台帳については、総務省のご指導も有って、Web上に公開されている自治体も増えて来ました。流石に執行伝票を公開されている団体はあまりお見掛けしませんが、要約された統計データであれば、有難いことに政府統計e-Statから時系列で30期分ほど取れます。本当に有難いことです。

「考え方」

さて、財務を眺めていく場合、いろいろなやり方が有ると思うのですが、今回は、歳出の内容を「ハード事業」と「ソフト事業」に分けて考えてみることにします。公会計の世界では「セグメント分析が重要!」ということで、お経の様に唱えられていると思いますが、「施設別行政コスト」といったイメージです。

ここで、ハード事業とは、公共施設の維持・運営のために支出されたコストと考えます。具体的には執行伝票の中から11節・13節・15節を抽出し、これらの支出額を施設に支出されたコストと見なしてしまおう、ということです。やや暴力的でご批判を頂くかも知れませんが、まずはここからスタート致しましょう。

そうして、曲がりなりにもハード事業のコストが集計出来たら、全体の歳出からハード事業のコストを控除したのち、更に25節・27節・28節などを分析対象外として除外した上で、残りの歳出額を「ソフト事業」と見なしましょう、ということです。

これらの集計作業を行ったのち、所属ごとにハード事業とソフト事業を再集計してみる。そんなプランで作業をやってみたいと思います。
(次回に続く…)

コラムニスト
淑徳大学コミュニティ政策学部 専任講師 松村 俊英

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