コラム

自治体における民間連携に関するコラム⑤ホームページにみる公共施設マネジメントの今

2016.12.08

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会 業務部長 寺沢 弘樹

公共施設等総合管理計画の策定、統一基準による財務諸表の整備、PPP/PFI導入のための優先検討規程の策定という3つの国からの策定要請や、財政状況の厳しさなどを背景に現在、ほぼすべての自治体が自発的か受動的かは別として、何らかの形で公共施設マネジメントに取り組んでいる。

その証拠に、Googleで「公共施設マネジメント」を検索すると約50万件がヒットする。「○○市は公共施設マネジメントに取り組んでいます」の力強いフレーズに興味をそそられネットサーフィンしてみると、驚くことに約90%の自治体のホームページが似たような構成・コンテンツとなっている。

「財政状況が厳しいので・・総務省からの策定要請を受け・・高度経済成長期に一斉整備された・・」といった枕詞を皮切りに、公共施設等総合管理計画(本編・概要版)と策定過程、市民アンケートやワークショップの結果、有識者委員会、施設白書、職員研修会、市民講演会、周知用マンガといった構成になっている。もちろん、これらのコンテンツがすべて掲載されている自治体ばかりではないが、2016年現在のトレンドが見えてくる。

筆者も公務員時代に体験したが、公共施設等総合管理計画の策定作業は、まじめにやればやるほど困難を極めることとなる。それは「①「縮充」という行政が経験したことないテーマを取り扱うこと、②ハコモノ・インフラという現物に対するリアルな計画であること、③将来の市民生活に大きな影響を及ぼすこと、④難解な前提条件が付与されていること」が他の行政計画との決定的な相違点だからである。

更に、最大の問題が「⑤(本当は現在進行形の問題なのだが)将来に向けた課題と錯覚して無責任な議論・先送りしようとすること」である。過去のコラムで指摘したとおり、庁内会議は担当者vs多数の評論家という構図になりやすく、議論も経験・知識・認識不足から稚拙なものとなりやすい。様々な困難と向き合いながら公共施設等総合管理計画の策定作業を進めることには、一定の価値があるだろう。このような意味で、そのまちの未来を示唆する公共施設等総合管理計画及び関連情報がホームページの中心になることは、理に適っているともいえる。

一方で気になるのが、「では何をやっているのか」である。立派な公共施設等総合管理計画では「○○年で総量を○○%削減します」「複合化・集約化します」「PPP/PFIを積極的に活用します」等のフレーズが並ぶが、その実態は残念ながらホームページ上では確認できない。

個別施設計画、再配置計画、アクションプランをつくってから実践と考えている自治体も多いように推測されるが、公共施設マネジメントの実践は行政が机上で考えた計画どおりに進むことはない。ワークショップを重ねることで、一定程度の市民の想いは斟酌できるかもしれない。最近では、ボードゲーム形式で公共施設マネジメントを疑似体験する取組も盛んだが、これらが実践に直結することはないだろう。実際に現場を動かすためには個々のプロジェクトに対する財源措置、庁内合意と必要に応じた議決、そして民間事業者のビジネスとなる市場性(、ときには政治的な駆け引き)が必要である。これらの生々しいプロセスを経ていくうちに、当初の計画は形をリアルなものに変質・収斂していく。

そうした実務的な面で、筆者は個別施設計画や再配置計画では断定的に決めつけるのではなく、一定の振れ幅をもつこと(またはこれらの計画策定を急ぎすぎない、必要なければつくらないこと)を推奨している。机上で経験値もない中で無理に検討・議論しているよりも、できるところ・小さなところから実践を積み重ねていくほうが結果的には近道で、かつ効率的だと感じている。

こうした感覚を持ちながら、改めてホームページに戻ってみよう。「公共施設マネジメント」でヒットしたなかでは、大牟田市が公用車の広告、庁舎のデジタルサイネージを掲載しているように、小さいながらも創意工夫を生かした取り組みが散見されるが、稀な事例となっている。

一方で、先駆的な取り組みをしている青森県、佐倉市、浜松市、武蔵野市、西尾市、流山市といった自治体が「公共施設マネジメント」のキーワードでは検索できない。Googleの検索エンジンが、公共施設マネジメントとこれらの自治体の取り組みを「異なるもの」として判断しているのだろうか。個別にこれらの自治体のホームページを見てみると、これまで実践してきた様々な取り組みや現在進行形のプロジェクトが詳しく掲載されている。そして、ホームページの構成も冒頭に触れた定型フォーマットとは大きく異なっている。更にいえば、オガールプラザなどの優れたプロジェクトも公共施設マネジメントではヒットしない。これらの自治体は「公共施設マネジメント」としてではなく、「自らの生き方」を個々のプロジェクトで具現化しているのではないか。

公共施設マネジメント・ファシリティマネジメント・資産経営といった用語の違いは問題ではないし、データ収集、計画策定などの一連の作業も決して無駄ではないが、計画と実践の間に存在する大きなハードルは認識しなければいけない。この乖離を埋めることができるのは、最前線で試行錯誤する担当者・組織の熱意と発想の転換、生きる手段としての小さなPPP/PFI実践の蓄積だろう。実践を蓄積した自治体は必然的にホームページも現在と形を変え、それぞれの自治体の「生き方」が反映された独自性の高いものになるはずである。

「Googleの検索エンジン改良」と「実践の蓄積による公共施設マネジメントの広がり」のどちらが早くに実現するだろうか。

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