コラム

デジタル社会形成に向けて 第2章(8)~自治体DXの先に~

2022.09.05

訪問型行政サービス(A公園の訪問価値)の効果測定を下記フローに沿って説明してきております。(下図記載)

訪問型行政サービスにおける効果測定フロー図1:訪問型行政サービスにおける効果測定フロー

前回からの続き~グループ化して傾向をつかむ

分析の対象とする大きなグループを「属性に応じてより小さなグループに良い感じに分類してくれる手法」の存在があるという話を前回のコラムで行いました。統計について詳しい方であれば、「因子分析あるいは主成分分析」と思われたかも知れません。確かにこれらの手法も大きなデータ群を、ある切り口から整理して、情報量の縮約を試みるという観点から、大変興味深い手法です。しかしながら、因子分析や主成分分析は、その分析対象を「量的データ」としております。例えば「年齢」などは離散的で量的なデータになります。他方で「性別」や「住所」などは、質的なデータと位置付けられます。

マーケティングを行うには量的データと質的データの両方を同時に扱いたいはずです。贅言(ぜいげん)ながら、納税者のニーズを汲み取り、最適な行政サービスを提供していくことが重要です。その時、どの様な属性を持つグループを対象として、政策を打って行くかが問題になりますが、実際には主軸(方向性)が明確に決まっていることの方が少ないのではないかと思います。

あるいは、旧来からの線引きの基準が揺らぎつつあると申した方が良いかもしれません。例えば「男女別」といった軸は、旧来では疑いようの無い堅牢さを持っていたのかもしれませんが、現代を生きる我々は、既にこの線引きがそれほど強固なものでは無いことを承知しております。あるいは「子育ての担い手」という切り口から考えたとしても、それが単純な性差を表すものでないことは、特に異論の無いところでしょう。ということで、これまでの価値観・風習・判断基準がますます相対化(※1)して行く中においては、ある政策の「ターゲット」を可視化することが増々困難になってきているのかもしれません。

政策決定の現場において、そのような曖昧な話は無いのかも知れません。とはいえ、幾つかの指標から、ある程度「自動的」に「グループ化」がされると、便利だと思える場合もあります。回りくどくなりましたが、そのような「グループ化」してくれる統計的手法が「潜在クラス分析」です。

潜在クラス分析とは?

因子分析やクラスター分析と呼ばれる手法に似ておりますが、潜在クラス分析では、因子分析やクラスター分析では扱わない、質的なデータも同時に取り扱うことが可能になります。また、より明確な違いとして、因子分析やクラスター分析は、類似した幾つかの特徴を持った個人の集まりから、相関の強い特徴同士を整理して、更に「より少ない特徴に集約する」という作業を行います。他方、潜在クラス分析は、類似した特徴や行動をする個人を集約し、グループの特徴を整理するというアプローチを取ります。

図2:因子分析と潜在クラス分析のイメージ図2:因子分析と潜在クラス分析のイメージ

因子分析と潜在クラス分析の違いについては、上記図2をご覧いただくと分かりやすいですが、より具体的な例として、ある地域において、住民の皆さんが任意で選べる公共サービスをどのような感じで選択しているか?ということを、ある程度のグループ単位ごとに傾向と特徴を調べたいというケースから考えていきます。

対象とする公共サービスは、訪問型行政サービス(※)とし、調査対象の住民数は600人程度とします。従ってサンプルサイズは600です。偏りの無い分析を行うには、偏りの無いようにサンプルを集める必要があります。

実はここが一番難しいところで、例えば、高齢者の行動だけを分析したいというのであれば、高齢者に絞ってサンプルを集めれば問題ありません。しかし、公共サービスを利用する住民全体となると、幅広い年齢層が含まれる事になり、それぞれの地域において、各年齢層の構成比率も異なるため、歪みの無いようにサンプルを集めたいところです。サンプルの収集方法は大変重要な議論ですが、詳細はまた別稿に譲ると致します。

実際に、下記図3のような住民のサンプルデータが取れたと致しましょう。アンケートを取って、600程度のサンプルサイズを集めたものの、欠損値などもあって、実際に使えるデータは500を下回っているとお考え下さい。

図3:調査用サンプルデータ図3:調査用サンプルデータ

俯瞰してみますと、性別は男女のどちらかになっております。実際はもっと多様なジェンダーがあるのでしょうが、サンプルが取れなかったと仮定いたします。年齢については、もう少し階層を細かく取りたいところではありますが、あまり細かくしすぎると、各階層に入るサンプルサイズが小さくなってしまう点と、この手の調査においては、若年層、特に児童や生徒のサンプルが取りにくいという点があります。

子どもの有無については、特段の論点は無いでしょう。所得階層については、アンケートでは実際の所得金額を記入頂くことになりますが、デリケートなところもあるため、欠損値が多くなってしまいます。職業については、年齢同様あまり細かくしてしまうと、各階層に入るサンプルサイズが小さくなってしまう悩みがあります。

完璧ではありませんが、サンプルデータが取得できたので、ここからクラス分けを開始というところで、次回に続きます。

(以上)

コラムニスト
公共事業本部 ソリューションストラテジスト 松村 俊英

参考

  • ※1一面的な視点やものの見方を、それが唯一絶対ではないという風に見なしたり、提示したりすること。

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