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2020(令和2)年度予算を探る(4)税制改正に関する動向と改正内容の見通し

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
明治大学公共政策大学院教授 兼村高文

予算編成とともに次年度の税制改正が議論されてきました。政府税制調査会はすでに9月に中期答申を発表し、自民党税制調査会も12月12日に大綱を発表しました。これまでの動きから次年度の税制改正を見通してみます。

「基本方針2019」の税制事項

税制に関しては、第3章「経済再生と財政健全化の好循環」の経済・財政一体改革の推進等の記載の中で税制改革について触れられています。これまで税制改革は、社会保障と一体改革として前政権から進められてきましたが、基本方針でも経済・財政一体改革の推進等の項目で改革の取組の1つとして上げられています。税制改革の基本的考えでは、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から引続き税体系全般にわたる見直しを進めるとし、個別税制では、人生100年時代・働き方改革に相応した所得課税、資産移転に中立的な資産課税、多国籍企業の実態に即した国際課税を上げ、またICTの普及に関して納税環境の整備とともに適正・公平課税の実現について言及しています。ここでは中立的で安定的な税制を基本的な観点からまとめるにとどめています。

政府税制調査会の中期答申

政府税制調査会(以下、政府税調)の中期答申は9年ぶりです。中里実会長最後の答申は今後の令和時代の税制のあり方を中心にまとめています。平成時代を振り返り経済社会の構造変化を整理し、「基本方針2019」で述べられた事項とともに、新たな令和の時代を見据えた税制のあり方について税制全体の考え方が提示されていて、中期答申としてのカラーよりも令和時代の税制についてまとめた内容です。
首相の諮問機関である政府税調はその時代を反映して注目を集めてきました。石弘光会長時代(2000年~2006年)には所得税見直しでサラリーマン増税が庶民の怒りを買いました。クロヨンと呼ばれた所得捕捉格差など不公平な所得税制に批判が向けられ、その後の政府税調の議論にも影響を与えてきました。しかし最近は税制の根幹に関わる答申は少なくなりました。専門家で構成される政府税調の答申は論点を示すうえでも意義あるものです。今年は消費税引上げという大きな改正がありました。今後の消費税のあり方など、踏み込んだ政府税調の考え方に触れてほしかった感はありました。

自民党税制調査会の大綱

自民党税制調査会(以下、自民税調)の大綱が発表されました。10月にスタートした自民税調は甘利明新会長のもとでインナーと呼ばれるメンバーなど組織の改革も行われてきました。公表された大綱を見ますと、甘利会長が就任時に打ち出した、約460兆円にものぼる企業内部留保の「貯蓄から投資へ」、データ経済の進展に対応した「デジタル課税」、米中貿易摩擦への「経済安全保障」などが掲げられ、デジタル時代とグローバル化に対応した内容となっています。具体的には企業のM&Aや5G投資への優遇措置が議論され、地方創生とともに企業版ふるさと納税を今後も継続する考えが示されています。
自民税調の大綱は次年度の税制改正に直結することからも注目されてきました。与党の大綱ですから国民の意見を反映した内容ともいえるわけです。アベノミクスの1本目の矢‘強い経済’を支援する優遇措置を盛り込んだ内容といえそうです。

2020年度税制改正を見通す

2020年度の税制改正はそれほど大きな改正はなさそうですが、ポイントとしては、1つには報道されているように、厚労省から要望が出され自民税調も主導してきた未婚ひとり親への寡婦控除の適用が上げられます。終戦後に戦争未亡人を支援する制度として創設された寡婦控除は、その後に離婚の母子家庭も対象になりましたが、最近は未婚の母子家庭がひとり親家庭の9%近くを占めるようになっています。寡婦控除を未婚のひとり親に拡げることに批判的な意見も聞かれますが、欧米のように多様な生き方を社会が認めるなら税制も対応すべきと考えます。2つ目は企業版ふるさと納税です。個人版ふるさと納税が2018年度で5千億円を超えるのに対して企業版ふるさと納税はわずか30憶円台です。政府の進める地方創生とともに税負担軽減措置で自治体への寄付を促します。地方活性化は経団連からも要望が出されています。投資を促進させるために償却資産課税に対する抜本的な見直しを求めています。3つ目として、働き方改革を税制面から支援する措置としての退職金課税の見直しや、所有からシェアへの環境変化に伴う自動車税制の対応が議論されている点が上げられます。
2019年の税制改正では、2014年以来5年ぶりの消費税率引上げが行われました。安倍首相は、今後10年は引上げせずに財政再建を進めると公言しました。政府税調と自民税調ともに消費税については触れていません。しかし外からは財政再建のために早急な税率の引上げを迫っています。現状ではプラスの成長が続いていることもあり、引続き税制面で成長を促す改正が盛り込まれています。しかし目先の経済は米中貿易摩擦の影響が現れ実質的にはマイナス成長に沈みそうです。
安倍政権は12月5日に事業規模26兆円(財政支出13兆円)の経済対策をまとめました。消費税引上げ後の消費下支えや米中貿易摩擦による景気減速、さらに東京五輪後も見据えた対策として2013年以来の大型の経済対策です。今年度の補正予算に来年度を含めて15カ月予算として来年の通常国会で成立見込みです。成長軌道に乗れるとよいのですが。

次回はいよいよ12月20日頃に発表される2020年度政府予算案について解説します。

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