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地域医療の視点から(4)現実の貧困や地域医療の不十分さをとらえきれない行政システムの実態

ジャパンシステム株式会社
公共政策・行政改革ディレクター
しろひげ在宅診療所 院長
山中光茂

最近、ある政治家が記者会見において「日本には貧困で食事がとれない人たちはいない幸せな国家だ」と話をしていました。確かに、戦中戦後の日本から比べると、総じて生活水準があがり、国家としての社会保障制度が充実してきたことは間違いありません。ただ、私は市長として行政の現場における現実をみて、また、在宅医療医として様々な生活を送る人々の現実をみてくると、今の日本において決して福祉サービスをはじめとする行政の機能を発揮するだけですべての人が最低限の幸せを担保できるとはいえないと言い切ることができます。

私は若い頃にアフリカの難民キャンプやスラム地帯などでも医療活動をしてきました。現場では行政サービスも民間の支援も不十分ではあったが、生きていくのが困難な環境の方々の「互助」のシステムが地域にあり、「今を生きる」ためにお互いが支え合い、必死で生きようとする思いが現場に満たされていたことを今も覚えています。NPOの立場で医療サポートしていた私たちはその一人ひとりの「生きる」という思いや地域のシステムがあったからこそ、人材育成や足らない物をサポートしてあげることにより、地域の価値観を壊さずに「生きる土台」の持続性を創っていくことができたのです。

今の日本では、生活保護のしくみがあり、地域包括支援センターという地域福祉の拠点も設置されており、誰でもどこでも食べることにも医療福祉を受けることにも困らないようなシステムがあるようにも思えます。ただ現実には、生活保護の部局に対して役所は多くの人数を配置することができないため、一人のケースワーカーが多数の対象者を抱え、現場の事情に対してきめ細かく対応できないのです。本当に困窮している対象者へのサポートの不十分さがある一方で、地方財政における生活保護費の約50%は医療援助費用であり、現場でその対象者と接しているとその仕組みを悪用しようとする患者も多く、医療従事者の「公平性」と「財政への意識」がない限りは生活保護による医療費の悪用を食い止める手段もないのです。

地域包括支援センターも現在は全国の約3割が行政直営で、約7割が民間委託となっているが、地域における生活困窮者や医療を本当に必要とする方の情報がきめ細かく的確に入ってくるほどの人的配置があったり、システムが整備されている訳ではなく、結果として入ってきた情報に基づいてその場しのぎに対応しているにすぎないのです。

現在、国も地方もうたっている「地域包括ケア」という構想を本当に進めていくならば、「医療福祉が十分に受けられない人」「行政制度によるサポートが受けられない人」が数多くいるという現実、そして行政がその実態を把握できていないという現実をしっかりと見据えた上で、現場や現実をみている多職種の方々の声や地域の自治会関係者の声、一人ひとりの痛みに関わる声をしっかりと聞きながら一人ひとりの幸せや痛みに現場できめ細かく寄り添っていこうとする必要があります。そして、それにもとづく制度設計をトップダウンの「理念型」ではなく、「現場型」に応じた柔軟な即応力のあるものにしていくべきなのです。

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