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自治体における民間連携に関するコラム(18)自分ごととして考える

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会 業務部長 寺沢 弘樹

社会問題となっている公共施設・インフラの老朽化について、公共施設等総合管理計画などを策定して全国一斉に取り組んでいるはずだが、実はどこか「他人事」となっていることがないだろうか。

総合管理計画や個別施設計画を30〜60年などの超ロングスパンで設定し、あたかも遥か未来に更新問題が発生するような錯覚をしていないだろうか。コンサルタントが策定した案を加除修正しただけの計画は、自分の言葉で説明できるだろうか。不可避の統廃合、外郭団体など既得権益からの経営分離、歳入確保に特化した本格的な資産経営などが進まないのは、こうした「誰か(あるいは計画)のせいにする他人事」の側面が内在するからではないだろうか。結果的に決めかたを決めず、やらない(≠できない)言い訳を並べていないだろうか。

一方で、筆者が支援させていただいた自治体では、社会・組織・上司等に責任を転嫁することなく、「自分ごと」として考えながら前に進んでいる。

小田原市では、副市長が中心となって庁内でPPP/PFIを用いれば解決できそうな課題を抽出し、7つの課題に対して関係者が徹底的にできる方法を模索していった。この過程では、関係者が自らコンストラクションマネジメントの会社(7社)にヒアリングを実施したり、給食の現場職員が内閣府のPFI簡易化ガイドラインを読み込んで期間の短縮を検討するなど、自発的で高質な検討が繰り広げられた。筆者が関与させていただいたのは短期間であったが、その後も関係者が自ら課題解決に向けて動いており、その進捗状況が続々と耳に入ってくる。

廿日市市では、宮島地域の浄水センター・下水道ポンプ場などのインフラ系施設の保守管理業務の包括委託を検討するに際し、将来的なエリアとしてのリスクマネジメントも視野に入れた公募関連資料の作成を行った。廿日市市からは、様々なPPP/PFIを行ううえでのスキルを身につけたいという要望も受けていたため、施設所管課をはじめとする関係者が自ら関連資料を作り上げる方式を採用した。延べ数日に渡る集中作業では、関係者が誰一人として逃げ出すこともなく、前向きな議論が展開された。結果として、民間事業者からは要求水準を大きく上回る提案が寄せられることとなった。

武蔵野市では、武蔵境駅前の市有地での定期借地権による市有地活動事業を巡る炎上の経験などを踏まえつつ、市民や議会の理解を得ながらPPP/PFIを活用していく方針を策定するため、企画・管財などの関係課と若手職員によるワーキンググループを組織し、内閣府の優先的検討規程に当たる「公民連携(PPP)に関する基本的な及び運用ガイドライン」を自分たちらしい形で取りまとめていった。この検討過程では、鳥取市の先進的な事例や内閣府の優先的検討規程のモデルも紹介したが、今の自分たちにできることを突き詰めて考えて行く中で敢えて「財産の貸付」にターゲットを絞り、今後、実践を通じて経験が蓄積されてきた段階で徐々にこれを充実させていくこととなった。

高知市では、桂浜公園の再整備を検討していたが、筆者が高知市で実施した職員研修に触発された担当課長が、基本構想で示したハコモノ整備を中心とした再整備から「ユルクトンガル」公園に方針転換することを決心し、本協会と連携してサウンディング型市場調査を実施しながら、市場性・事業採算性を中心に据えた検討を進めている。このサウンディング型市場調査では、担当課長が東京で開催したサウンディングセミナーでPRするだけでなく、その後、自ら関心の高そうな民間企業に出向いて営業活動を行うなど、旧来型の行政では考えられないような積極的な仕掛けを行なっている。こうしたこともあり、最終的には既存売店の整理を行った後、浜を活用した社会実験や空き店舗の活用などを試行しながら、市場に見合った形で徐々に桂浜公園の魅力を高めていく魅力的な方向性を見出していった。

東村山市では、前年度に本協会とともに随意契約保証型の民間提案制度を全国の先進事例のヒアリング調査などを基に検討していたが、事業化には至らなかった。当時の報告書は我孫子市・流山市・福岡市などの先進自治体の要素を精緻に分析して作成した「理想的なもの」であったが、東村山市の背景を反映したものとはなっていなかった。そこで、改めて東村山市としてどのような工夫をすれば運用可能な制度となるのか、要素を一つずつ検証しながら実践可能な提案制度、そしてこれに付随する地域プラットフォームを検討していった。

アドバイザーとして関わっている常総市では、職員研修、市長を先頭にしたオガールの視察、小田原市と同様の課題検討など、積極的でフットワークの軽い議論を繰り返す中で、まずは包括施設管理業務に着目し、サウンディングも含めて全て自分たちで事業スキームを構築していった。

いずれの事例も、支援業務を行う本協会(通常はコンサルタント)が行政に案を示すのではなく、行政が公共施設等を取り巻く環境を正確に把握・理解したうえで、自らのまちの実態に即した形で、自らの問題として考えて自分たちらしい、実践できる形を自分たちで見出しているのである。

 これらの過程で共通しているのは、全ての文言を行政の職員が自ら書いていることである。だからこそ、誰かに依存したり人のせいにすることなく、武蔵野市では議会説明を全て自分たちで実施し、廿日市では優先交渉権者との交渉も全て自分たちで行なったのである。

 本来であれば当たり前のこのプロセス、「自分ごと」として現在進行形の公共施設・インフラの問題を捉えて解決に向けたベクトルこそ、今、改めて見つめ直してみるべきでないだろうか。

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