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公共政策&行政改革コラム①「市民の声を聞くための行政システムの形成」

ジャパンシステム株式会社 公共政策・行政改革ディレクター 山中 光茂

私が市長の職に就任したのは、33歳という年齢でした。全国最年少という肩書きは、実務能力や人生経験という視点からすると決して誇れるものではなく、「未熟」「経験不足」の代名詞でしかありませんでした。

松阪市長という職を約7年にわたって行ってきた基軸は、常に「対話」という視点でした。自分自身が市長として、行政職のトップとして「未熟」であるという強い認識からスタートしているからこそ、様々な「現場の声」を聞くことから始めることにしたのです。
「現場の声」とは、決して単純な「市民の皆さん」という意味だけではありません。これまでの行政執行に現場で携わってきた「職員」であったり、様々な利害関係に関わる「団体」であったり、なかなか表に声をだせない障がいのある方々やまだ生まれてきていない未来の子どもたちなど「声なき声」の「現場の声」もそこに含まれます。自分の知識や経験にうぬぼれることなく、「市長」という一人の人間の自己満足的なトップダウンにこだわることなく、多様な「現場の声」を聞くというシステムを行政のなかに創ろうとしてきました。

「現場の声を聞く」という耳障りのいい言葉は、よく選挙などでも使われやすいのですが、それが単なる政治家の理想や個人の思いであってはいけません。
その「声を聞くシステム」が制度として、常に「持続的なもの」であり、それによって現場に声が本当の意味での市民の幸せや未来のまちづくりに対して具体的に反映されていくものでなくてはなりません。

行政は「現場の声を聞く」システムとして、「〇〇審議会」「〇〇検討会」など、一部の利害関係のある代表者を集めて関係者の声を聞いたというアリバイづくりをすることがほとんどです。また、市民全体から意見を聞くシステムとしては、「パブリックコメント」を用いて、意見を広く「市民の皆さん」から求めたというアリバイだけをつくろうとします。ただ、それは実質的に「現場の声」を聞いたというよりは、行政が決めた後に批判を受けにくくするためのシステムに過ぎず、ほとんどの場合においては行政と一部の利害関係者を持つ代表者によって都合のいい方向性に誘導されがちです。

松阪市では、その「審議会」「検討会」「パブリックコメント」といった閉鎖された公開性のない行政システムではなくて、街の未来にとって重要な案件や多くの方々の痛みや幸せに関わるみんなで議論をするべき問題については、行政や一部の利害関係者で方向性を決める前に、市民公開の場において「シンポジウム」「フォーラム」「ワークショップ」「現場視察」などをみんなで繰り返しおこなうというルールづくりをしました。

そこにおいては、「審議会」のような一部の団体代表者だけ行政がある程度決めた方向性について議論するのではありません。様々な思いを持つ市民やその分野に関わる外部有識者、行政職員などがみんなで現場をみて、いくつかの方向性としてのシミュレーションを行い、ともに議論をしながら、みんなで「街を創っていく」という具体的な行動を起こしていくのです。当然、私も参加をし、司会進行と議論の進行役として毎週末様々なテーマを市民の皆さんと職員が混じり合って公開の場で議論を積み重ねます。

それぞれの市民の皆さんにはたくさんの価値観や様々な思いがあるので、みんなが最初から同じ方向を向かっている訳ではありません。
だからこそ、議論をすれば「混乱」も「対立」も起こります。それを避けるために、「古い行政システム」では、一部の利害関係者の利益関係、内容を精査しない議会の合意に加えて、形だけのアリバイ主義の審議会やパブリックコメントで行政が「現場の声」を無視して方向誘導を安易に行っていくのです。

松阪市では、市民参加型の「シンポジウムシステム」という行政決定をするなかで、方針決定前に『市民に役割と責任』を持っていただくことにしました。
また、市政においては全体として決定しなくてはいけない重要案件もあれば、地域ごとにきめ細やかな地域政策を住民とともに議論をすることも大切です。地域のことは、市長や行政職員よりも地域住民のほうが知識も現場感も地域への愛情もあるのです。だから、「住民協議会」といったシステムを地域と行政で一体となって創りました。そこでは、「地域計画」を行政主体ではなく、地域住民が主体となって、地域の高齢者政策、子育てのこと、街の活性化について、海沿い、山間部、中心市街地などそれぞれの個性に合わせた地域のあり方を「住民の役割と責任」のなかで議論をして、行動していけるシステムにしていきました。

「シンポジウムシステム」と「住民協議会」「地域計画」という松阪市の住民参加型の行政システムについては、今後具体的な事例とその成果について、コラムにおいて書かせていただこうと思っています。

市長が誰よりも優秀な政策決定権力者ではなく、住民の誰が市長であったとしてもシステムとして街の今と未来に関わっていけるシステムが地方自治体に根付いていくことが非常の重要だと確信しています。

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