コラム

公共施設マネジメントの現状と課題について(3)公会計から予算編成まで

2018.06.25

ジャパンシステム株式会社
ソリューションストラテジスト 松村俊英

1.公会計から予算編成まで~全体の見取り図~

公会計の固定資産台帳整備から始まって、公共施設等総合管理計画、最終的に予算編成へと繋がる流れは、どの様に考えれば良いだろうか。下記図表3にその全体像を示す。

図表3

1.公会計から予算編成まで~全体の見取り図~

出所:筆者作成

図中に「所与」として「インフラ長寿命化」と「社会保障」等を記してある。インフラ長寿命化については、現実問題として、道路や橋梁、上下水道などの施設は、公民館や学校校舎の様に削減や統廃合の対象にならないという認識に基づいている。「コンパクトシティ構想」によって、自治体内の機能が幾つかのコアに集約され、その結果として道路等のネットワークを減少させることが出来るのであれば、建物同様に縮減による財政的インパクトを計測すべきであるが、現実には、現在保有するインフラ・ネットワークを、出来るだけ効率的に少ないコストで維持していく方法を検討する、という方向性であろう。その意味で、インフラ長寿命化の方向性はかなり明確であり、そのコストは、施設マネジメントに対しては、所与の条件として外挿的に与えられる条件である。

他方で増大する社会保障費も、一地方公共団体で、その増減を論じるには限界のある分野である。結局、国の施策に従うしか無いとすれば、やはり、施設マネジメントを考える上では、社会保障費関係費も外的に与えられる財政的制約条件である。

これら2つの財政的支出が大きいので明示的に論じているが、それ以外にも個別の地方公共団体ではコントロール出来ない、財政的制約条件があるはずである。施設マネジメントの解は、それらの制約条件下で考察すべき問題である。

これらの制約条件を所与として、建物のマネジメントを考える際、各地方公共団体によって施設をどうして行くかについては、それこそ千差万別である。日本全体としては、人口減が始まっているため、総体としては、施設をどの様に減らすのか、集約するのか、という議論が大宗を占めよう。しかしながら現在でも、例えば、首都圏の一部や沖縄などの地域では、若年人口が増加しており、子育て施設や学校教育施設の不足が問題になっている。従って、各地方公共団体は、広域的な視点も踏まえつつ、あるいは、人口構成の変化なども考慮しつつ、自分の街をどうするのか、したいのかという方向性を定める必要がある。

その様な総体的な方向性・戦略の中で、個別具体の現有施設をどう取り扱うのかを考察する必要があるが、その時、単純に近隣団体比べて、住民一人当たりの施設床面積が大きい、公民館が多い、市営住宅が多い、といった施設に関する定性的データを並べ立てるだけでは物事は進まないであろう。勿論、これら施設に関する情報の必要性は論を俟たないところではあるが、施設の評価そのものは二義的なものであって、その前にすべき作業があると考えられる。

次回は「行政評価と施設評価」と「セグメント情報と配賦基準」について記述する。

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