コラム

公共政策&行政改革コラム④「企業と自治体の『明るい癒着』を地域活性化に!〜公平性・中立性を乗り越えた企業参画による自治体マネジメント」

2016.11.11

ジャパンシステム株式会社 公共政策・行政改革ディレクター 山中 光茂

「癒着」と聞くと、後ろ暗いイメージを持つのが当然だと思います。松阪市では、私が市長在職中に毎週一度、全国の企業約800社に対して「明るい癒着ジャーナル」というメールマガジンを送信しておりました。
内容は、松阪市の市内企業の特徴ある取り組みの紹介や、全国のトップブランドを持つ企業と市内企業との具体的な連携事例の紹介、そして、松阪市役所、市内企業と全国の多様な企業の具体的な連携のきっかけとなるような様々な情報提供を行っていたのです。それとともに、企業の「優位性がある提案」に対しては行政として積極的に活用するという方針を行政の軸足においておりました。それを対外的に理解いただくための言葉として敢えて「明るい癒着」というフレーズを用いていたのです。

古くから、ロッキード事件など政治家や行政官僚と企業の「暗い癒着」は、たびたびニュースにあがり、行政や政治に対する国民の信頼を失墜させてきました。その多くは、「公の利益」のためではなく、「個人的な利益」を享受するために「公の損失」を生み出す不公正な取引を行ってきたというものでした。

松阪市で企業の参画による自治体運営を試行したのは、当然個人の利益を生み出す「癒着」ではなく、「公の利益」のために民間企業の「優位的な技術やノウハウ」を活用する市民の誰に対してでも説明責任が持てる「明るい癒着」をしようというものでした。

先に述べたような「暗い癒着」が歴史的に横行した経過もあり、行政職員は「企業の活用や連携」に極めて消極的です。行政にとって、「中立性」「公平性」ということは何よりも優先する判断基準であり、その基準を外れてしまうと「癒着」と言われかねないために、特定企業が行政に関わろうとするときには極めて「消極的」、よくいえば「慎重に」なるのです。

企業が行政に売り込みにくると、まず行政職員は拒否反応を即座に示し、「怪しい」と構えます。では、その「怪しい」という拒否反応を乗り越えて「明るい癒着」に導くにはどのようなプロセスが必要かということです。

松阪市においては、三越伊勢丹、ソフトバンク、ハリウッド化粧品など全国的な企業と堂々と連携をするなかで、行政や地域、または市民の未来にとって具体的なメリットのある事業展開を官民連携で進めていくことが出来ました。大学機関、行政、企業が連携して商品開発をしたり、首都圏と地元企業のジョブマッチングを行政が仲立ちをしたりなど、「中立性」「公平性」を超えて、市民の幸せにとって優位性のある事業を実現してきました。

「暗い癒着」にならないための一つ目の条件は、「透明性」ということです。私は企業の「優位性のある提案」を行政で迅速に実現をしていくために、最初から市民に対するメリットと企業との関係性について、より具体的に議会や市民に対して徹底して情報公開をし続けていきました。例えば、ソフトバンクグループから500人以上の子どもがいる中学校でIT教育のモデル事業をしたい、という提案があるなかで、国からの補助をもらうためには2週間以内に返事をしなくてはいけないという事案がありました。
事業費総額は約5億円で、市民の税金を使うことなく民間事業者のノウハウと事業展開への思い、そして国へ優先的に手を挙げた地域への「モデル事業」としての優先順位をうまく利用したものでした。ここで、行政が「他にも同様の事業者があるから」とか、「入札やコンペというプロセスが必要」とか言っていたら、企業との「明るい癒着」によるメリットを失わせてしまいます。だからこそ、その特定企業との連携の具体的プロセスを明確にしていくことが大切なのです。

2つめの条件は、「明確な優位性」ということです。なぜその事業者と連携をするメリットがあるのかを、「透明性」のなかでしっかりと市民や議会に対して示されることが重要です。いかに子どもたちの未来にとって行政負担なく「他の企業との比較での明確な優位性」があるのか、ということについて徹底的に説明責任を果たしていかねばなりません。事業選択をする際に、他の事業者に対しても同様のアプローチをするという手続きや事前にいくつかの事業者と「裏」で話し合いをしていたとしても、最終決定前には「市民公開」の場における「優位性」を確認できる「公開プレゼン」「公開コンペ」「意見聴取会」などを活用することも望ましいと言えます。

「暗い癒着」になってしまうのは、公表される前に「裏」で話し合わせていることが「市民のため」ではなくて、政治家や特定の行政職員との「個人的なつながり」のなかで結論を選択されてしまうからなのです。だからこそ、仮に「個人的なつながり」で事業選択をするとしても、その選択が「明確に市民の利益につながること」、その決定が「市民の目の前で透明性を持って決められたこと」という「アリバイ」をしっかりと創ることが大切なのです。

松阪市では、三越伊勢丹の企業シンボルである「ライオン像」を街中のポケットパークへ寄贈いただいたり、ハリウッド化粧品と連携して高齢者施設での口紅体験講座を開いたりしていました。特定事業者との連携のメリットを市民に分かりやすく伝えながら、事業の効果が「明白に市民に還元」される「明るい癒着」を公明正大に行っていきました。

自治体側の「中立性」「公平性」という市民からの信頼感と、企業側が得意とする「経営感覚」「多様なサービス提供の可能性」というそれぞれの「優位性のある特徴」を生かし合うことで、市民の幸せや街の未来につながる取り組みが進められるのです。それが、幸せを生み出す「明るい癒着」なのです。

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