コラム

老朽化と財政難への「経営」が試される、公共施設マネジメントコラム~「資産」が「負債」になる場合①~

2016.06.16

※本コラムは、「月刊地方財務」(ぎょうせい発行)2016年3月号 東洋大学客員教授南学氏の連載「老朽化と財政難への『経営』が試される、公共施設マネジメント」に掲載された記事です。

東洋大学客員教授 南 学
ジャパンシステム株式会社 ソリューションストラテジスト 松村 俊英

新地方公会計で「資産価値」への認識が変わる

庁舎のリース方式での整備(愛知県高浜市)や、学校プールの室内プールでの共用化など、公共施設マネジメントの分野でも、単に総面積の削減のために、施設の統廃合をすすめる手法以外に、従来の発想を転換させて、財源確保効果を産み出す事例が注目されつつある。

これらの財源確保策を軸としたマネジメント手法に共通しているのは、発生主義複式簿記を適用する新地方公会計改革の進展が背景にある。今回は、新地方公会計改革によって、自治体における資産と負債の把握によって、どのような発想転換をもたらすのかについて、現時点における基本的な観点を整理したいと思う。

現在、多くの自治体が、「公共施設等総合管理計画」の策定や「新地方公会計」の導入、さらには、下水道会計等に求められている「公営企業会計の発生主義化」への対応によって、保有する「資産」情報活用の整備に取り組み、公共施設マネジメントに活かす方策を検討し始めている。この検討をすすめるためには、基礎データ確保のために固定資産台帳整備、特に、施設別のセグメント化されたデータが必須であることを、これまでも事例をもとに検証してきた。ここで、「資産」は、もっぱら、取得時の価格を元に「価値」の測定がなされているが、公共施設の持つ「価値」は、ある意味で、負債的な側面も併せ持つことに留意しなければならないこともあるので、今回は、新地方公会計導入に際して、考慮すべき実務的な論点を簡単に整理しつつ、その拡張として、施設マネジメントとの連携による、施設別財務書類の表現形式について検討する。

新地方公会計導入上の論点

新地方公会計導入の際に検討しなければならない論点の主となるものは、以下にまとめられる。

1、会計基準の選定
2、仕訳発生のタイミング・システム(期末、日々)の構築
3、セグメントの単位
4、活用方法など

本稿に関わる論点は、主に3.と4.である。「3.セグメントの単位」については、そもそも、新地方公会計で用意された4種類の財務書類について、それぞれ同じセグメントで作表が必要なのか、という議論があるが、今回は行政コスト計算書に焦点をあてることにしたい。

そもそも予算編成の段階では、「(予算)事業」の単位でセグメントが設定されているため、いわゆる「事業別」を、最小のセグメントと考える事については、自然である。しかし、問題になるのは、「予算事業」といわゆる「(事務事業)評価対象事業(以下、「評価事業」)が、例えば図書館運営事業における管理運営事業と読書推進事業のように、1対1対応になっていない場合である。両体系を温存したままに進むと、予算事業と評価事業の間で、共通費の配賦や組み替えなど発生して、集計されたコスト情報の見通しが悪くなる。

さらに、「施設別」という切り口である。このセグメントは、施設マネジメントの世界では、「施設カルテ」として作成・公表されている情報形式と、本質的に同じものである。そこには、減価償却費という費用項目が登場し、モノとカネの世界を繋ぐ働きをしている。

また、施設と言っても、「小学校」という単位なのか、あるいは、「小学校の××校舎」という単位で作表するのか。さらに、都市部の複合施設が当たり前になっている自治体においては、「床別」というセグメントもあり得る。

施設別にセグメントするためには、予算編成時に、必ずしも施設を意識していないケースが多いため、事後的に(仕訳のタイミングで)、事業と施設を紐付ける、作業が必要となる。その際、多くの費目が、「配賦」という形で、予め定めた何らかの基準によって、施設に配分される事になる。

4の「活用方法」については、コスト情報を使って行うべき作業としては、使用料・手数料の見直しが考えられる。これまでも、受益と負担の関係が比較的はっきりと認識出来るような財・サービスについては、一般会計とは区分されて経理が行われてきた。しかも、発生主義科目である減価償却費を明示的にすることで、事業に投下された資本コストも、きちんと、使用料・手数料で回収するメカニズムが設定されている。

公会計改革を一般会計・普通会計に適用させようとする主因には、このメカニズムを採用できる分野がもっとあるはずだ、という問題意識が存在することは容易に理解できる。ただし、一般会計等で行われている事業には、単に、所得の移転を行っているだけのものや、排他性がなく、広く薄く税金としてコスト回収せざるを得ないものも多く含まれているため、財務情報のあり方としては、その利活用を効果的に行うために、セグメント別の財務情報が、どうしても必要となる。

※次回は、本記事の続きとして、新地方公会計情報の活用について記載します。

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