コラム

ITの習性を知る④ データ指向アプローチ

2017.08.08

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
データキュレーション株式会社 代表取締役 寺澤慎祐

第3回は、全体最適を実現するエンタープライズ・アーキテクチャについてでした。
全体最適にとって標準化は重要なことですが、アプリケーション開発方法、開発言語、技術などは日進月歩で3年前の標準は非効率な標準になってしまう可能性もありますので柔軟性も必要になります。しかし、標準化と柔軟性はトレードオフになることが多くどっちもつかず結局はバランスが重要ということになってしまいます。バランスは非常に主観的な事柄であるため、担当者や責任者が変わることで変わってしまいます。では、企業や公共団体などの組織にとって、なにが絶対的な事柄なのかといえば、それは“データ”であると言えます。

開発における3つのアプローチ

データ指向アプローチ(データ中心アプローチ)な開発方法以外には、プロセス指向アプローチ(プロセス中心アプローチ)とオブジェクト指向アプローチ(オブジェクト中心アプローチ)があります。 この中で一番古いのは1980年代ぐらいまでは主流だったプロセス指向アプローチですが、業務やシステムが複雑になり変更頻度が増加することによってプロセス中心では収集がつかなくなり、効率も悪くなったため1980年ぐらいからデータに着目したデータ指向アプローチが登場しました。しかし、データ指向アプローチは「1つの事実は1カ所で管理する」という原則のもと一つのデータと一つのデータ保存場所にこだわることでシステム性能に問題が生じました。

そこで登場したのが、現在の主流でもあるオブジェクト指向アプローチです。1980年代後半に誕生したオブジェクト指向アプローチは、プロセスとデータを一つに括って、処理及び状態をオブジェクトモデルとして定義することでオブジェクトの再利用性や組み合わせを容易にしました。

オブジェクト指向アプローチは、プロセス指向アプローチとデータ指向アプローチを合わせたような良い解決方法です。現在はオブジェクト指向な開発言語が標準的ではあるもののシステム設計時のモデリングプロセスは現在も重要なプロセスですが、モデリングの結果によっては再利用性や組み合わせを複雑にすることもあります。

やっぱりデータ指向アプローチ

現在はクラウドコンピューティングや分散技術の台頭によってコンピューティングパワーが飛躍的に増加したことによって、データ指向アプローチの「1つの事実は1カ所で管理する」という原則で生じたシステム性能問題を解決してしまいます。極論かもしれませんが、プロセスもオブジェクトも時代の流れや市場の変化によって流動性が高く変化してしまいますし変化させるべきなのかもしれません。

しかし、データは業務の中で生成されるもので、どんなにビジネスが変わろうともデータが生成され利用されることは変わりません。ですので、データを中心としたデータ指向アプローチが変化に対応しなければならないビジネス、変化を作らなければならないビジネスに適していると思います。

今回はシステム開発においてデータ指向アプローチが良い選択だとしたに過ぎませんので、次回データ指向アプローチについてもう少し詳しく解説します。

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