コラム

地方から世界をリードする「本物の豊かさ」を創る④「原子力」(げんしりょく)から「元気力」(げんきりょく)のまちへ。「原子力発電所の立地に頼らないまちづくり」へ!

2017.11.28

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
一般社団法人 地方創生戦略機構 代表理事 中山 泰

前回は、「タクシー空白地域という『困難』から、モノもサービスも、そして「まちの未来の夢」も運ぶタクシーという『宝』が生まれた事例」についてご紹介しました。この中では、将来、地域で生産した太陽光電力・廃棄物電力などの再生可能エネルギーを市内の住民生活や地域産業活動に供給していく「環境にやさしいまちづくりをめざす未来の夢」に言及しました。

「環境にやさしいまち」への未来の夢とは。この第一歩となったのが、平成18年に京丹後市で行った「原子力発電所の計画構想の撤回要求とその実現」です。今回は、原子力発電所計画という、否応なく賛・否の両極に分断させられてしまった「地域の困難」の中から、人や自然環境のもつ「元気力」を宝として活かそうとするまちづくりが生まれた事例をご紹介します。

実は、京丹後市では、昭和50年(1975年)、旧・久美浜町に対して、久美浜原子力発電所(仮称)の立地をめざし、関西電力により事前環境調査の申し入れが行われ、それ以来、同町を中心に、賛否が真っ二つに分かれ、町議会での決議なども含め、約30年間にわたり熱い議論と賛否を巡る真剣・真摯なせめぎ合いが断続的に行われていました。

このような中、平成16年(2004年)、旧6町の合併により新・京丹後市が誕生し、その際、私は「地域の特色である自然環境と調和した魅力あふれるまちづくりをめざす。原発計画は、新市のまちづくりにはなじまない。」を公約に掲げ、当選したことを受け、早速、原発計画の扱いについて対応を進めました。

その後、国から「原発計画は新市にはなじまない」という私の姿勢を撤回しない限り、毎年交付されている地域交付金(数百万円規模)は交付できない、という口頭通達を受けました。当方として到底受け入れられる訳もありません。そこで、仮にも現状を据え置いて得られる僅かなメリットもなくなる中で
• 立地予定地区(久美浜町蒲井区、旭区)とご相談し、新市として早急に「原発立地に頼らない地域振興計画」づくりを進める
• 同計画の策定ができた段階で、関西電力に対して、原発計画のための調査申し入れの撤回を要求する
との段取りを内々に決め、作業に取り掛かりました。

約1年かけて予定地区の皆さんとの丁寧な相談・会合を重ね、平成18年2月、「原発立地に頼らない地域振興計画」を策定し、市議会に報告を行うとともに、関西電力に対して「久美浜原発立地のための事前環境調査申し入れの撤回要請」を行い、これを受け同年3月、関西電力から建設断念の決定が伝達されました。約30年間に及ぶ地域の苦悩から、脱原発(計画)の実現!です。

その後、関西電力からの寄付金(約5億円)もお受けし、原発立地に頼らない計画に沿って、地域の豊かな特色を活かした振興策(※)が、住民の皆さんを主体に逐次、実現し、現在、人と自然の「元気力」を活かした地域づくりが発展しつつあります。

(※)立地予定だった蒲井区・旭区は、かつては一遍上人も滞在し、また千石船の寄港地として長者村が栄えた歴史をもち、風光明媚な自然環境に恵まれた、豊かな歴史と自然環境に恵まれた地域です。これらの特色を活かした長者の湯「いっぺん庵」や滞在型の市民農園「蒲井シーサイドクラインガルテン」などを新たに設け、ツリーハウスやシーカヤックによる「自然と人の元気力」でまちの活力と幸せを育んでおられます。

「原発に頼らないまち」の大きなテーマは、「原子力から、元気力のまちへ」です。自然環境の「元気力」で訪れる人を癒し元気を励ます。住民の「元気力」でまちの活性化に頑張る。原発立地申入れに伴う「地域の困難」の中から、人や自然環境のもつ「元気力」を宝として頑張るまちづくりが生まれた事例です。

なお、脱原発の「元気力」は、やる気次第で、国の経済も世界の未来もますます元気にします。私は、政府や社会にこう訴えています。 「原発の中期的な撤退のスケジュールと時期を、明確に世の中に打ち上げるべきだ。そして、撤退時期までは、枯渇しないエネルギー即ち再生可能エネルギー生産の 技術開発に、国を挙げて全力投入する。万年単位で厳格に管理しないといけない核のゴミの大きなリスクとコストを将来の世代にツケ回すことは、決して許され ない。

世界きっての技術力をもつ我が国を挙げてエネルギー技術革新に全力投入すれば、頂の高くて他の民生部門に波及する裾野の広い技術革新が、必ずやたくさん生まれる!これは、真に豊かな地球規模での繁栄の時代に向けて、日本が世界をリードしていく大きなチャンス!であり、日本の歴史的、世界的使命だ!」(「パタゴニア」への投稿文 http://www.thecleanestline.jp/2013/10/go-renewable-yasushi-nakayama.html ご参照) ぜひ、将来世代の安心・安全と豊かな繁栄のため、日本社会の脱原発を心から望んでいます。

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