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「これからの公会計を考える」第六回:新地方公会計制度の会計モデル(その3)

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「これからの公会計を考える」第六回「新地方公会計制度の会計モデル」(その3)をお送りします。

(総務省方式改訂モデルの特徴)

今回は、早晩、「発展的解消」が予定されている「総務省方式改訂モデル」(以下、改訂モデル)のお話になります。現在、圧倒的多数の団体が採用しておられるこの会計モデル。皆さん良くご存じですので新たな知見を加えさせて頂く事もないのですが、少しだけお付合い頂きます。

 以前にも書かせて頂きましたが、財務諸表の表現形式としては、基準モデルも改訂モデルも同じ「仲間」という事になります。4表作成しますし、税収の取扱いについては、「財源の調達」として、純資産変動計算書で計上する事になっております。これは、元々の「総務省方式(自治省方式)」が、基準モデルの登場によって影響を受け、「改訂」した結果なので、表現形式が一緒なのは当然とも言えます。

 ただ、「構造」としては一緒なのですが、個々の計算書の表示科目などは、基準モデルと異なっております。例えば、行政コスト計算書ですが、改訂モデルの場合、現行官庁会計で行われている歳入歳出の区分-款-に近いセグメントで提示されますので、歳入歳出決算書を見慣れた(?)市民の方には親しみ易いかも知れません。

また、純資産変動計算書は、基準モデルのそれと比較すると、随分と簡略化されており「見やすく」なっています。

 勿論、相違点もあります。その財務書類の作成方法です。これまでも言及してきた通り、改訂モデルでは、「決算統計」中の数字の「転記」によって、財務書類を穴埋め的に作成していくという、ある種、独創的な作成方法が採用されています。皮肉ではなく、こういう作り方が出来るのは、日本においてだけでは無いでしょうか(海外の事例は知らないのですが)。それだけ、充実した「統計データ」が蓄積され続けている、ということでしょう。結果的に、「資産」というストック情報についても、決算統計の中にある過去全ての「普通建設事業費」という支出項目を積み上げることで、近似的に資産総額を推計してしまおうという事になっております。画期的ではあるのですが、やはり、個々に資産を台帳に整理して、その簿価の積み上げを貸借対照表に計上する方法に比べると、正確さに劣る点は否めないと思われます。また、元々、新地方公会計制度導入のきっかけが、「資産をきちんと把握すること」にあった事からしても、問題がありましょう。

この点は、当初からきちんと認識されていまして、改訂モデル採用団体においても、「段階的」に、固定資産台帳整備を行うことが「要請」されていた訳でもあります。ただ、実際に改訂モデルユーザーで、台帳整備の結果を段階的に貸借対照表に反映された団体は殆ど無いのではないでしょうか。

 因みに、総務省の「地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会」

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/koteisisandaichou-seibi/index.html

の委員でもある愛媛県砥部町さんでは、改訂モデルユーザーではありますが、平成21年度版財務書類からは、貸借対照表に計上される資産額を資産台帳の数値を持ってくる方式に変更されています。因みに、一旦、台帳ベースの改訂モデルに移行した後、以降の台帳の更新作業と財務書類の作成はどの様にされているのか大変興味深いところです。

http://www.town.tobe.ehime.jp/soshiki/2/zaimu-renketu.html

 さて、移行後、どれくらいの「影響」があったのでありましょうか。町の貸借対照表を拝見いたしますと、改訂モデル版なので、土地/建物が区分表示されていないため、よくわからない所もあるのですが、平成20年度(町全体版)の「公共資産合計」がざっと424億円。翌平成21年度の「公共資産合計」がざっと438億円で、14億円増えております。同年度純資産変動計算書の「資産評価替えによる変動額」が▲7億円、「無償受贈資産受入」が1億円、「その他」が10億円。同年度行政コスト計算書を見ると減価償却費がざっと10億円。同年度キャッシュ・フロー計算書の「公共資産整備支出」が22億円。424-7+1+10-10+22=438億円 ということで、平仄が合っております。結果的に、普通建設事業費の積み上げベース資産計上額と固定資産台帳ベース資産積上げ計上額では、殆ど(7億円)しか、差分が無かったということになりましょうか・・・。

 現在、改訂モデルで作成してらっしゃる団体も、この3月末に総務省から公表される予定の新しい公会計基準に順次移行する事が求められる事と思います。その際、台帳整備が必須になります。次回は、新しい公会計基準に纏わるお話に進んで参ります。(つづく)