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「これからの公会計を考える」第三回:新地方公会計制度の概要(その3)

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「これからの公会計を考える」第三回「新地方公会計制度の概要」(その3)をお送りします。前後編でお送りする予定でしたが、予定を変更し、全3回でお送りします。

前回、お役所の会計方式が「発生主義・複式簿記」という形に見直されようとしている、というお話で、現金主義と発生主義との比較まで書きまして、「何とか簿記」というお話まで行きませんでしたので、今回はそこからです。

さて、会計処理の方法として、単式簿記とか複式簿記とか言われる方式がありまして、現在のお役所の会計は、専ら「単式簿記」という事になっております(一部の公営企業会計などは除く)。「単式」の「単」って何だ、という事ですが、これは、記録の方法として、単に現金の増減、入りと出だけを記録する記帳方法、という事で如何でしょうか。

お役所の会計の場合、もっぱら、現金で予算が組まれて、現金で支出されて行く訳ですから、その記帳の方法も、大雑把に申しますと「現金が入ってきた。現金が出て行った」という事実を記録しておく事で足りると、という訳です。もちろん、実際にはそんな大雑把な記録をしている訳ではなくて、「何々予算の何々の項目を支出しました」という事で、一枚の伝票には、「何の予算を執行したか」という情報が埋め込まれております(歳出の場合)。歳入の場合も、同じように「どういう種類の税金が収入されたか」という情報をともなって、記帳されております。なので、「単式」といは言いつつも、色々な情報を持っております。まあ、当たり前だと思いますが。

では、「複式」となると、何が違うのか、という事ですが、それは、現金の収入・支出に「加えて」、損益情報を「一緒に」管理したいので、この損益に関わる情報が、従来の現金の異動情報に「付加」される所です。

「損益」を計算するためには、費用と収益をそれぞれハッキリさせないといけない訳ですが、例えば、「給料の支払い(=費用)=現金の支払い」とか、「現金の収入=税金(=収益)」といった塩梅です。なので、現金の動きに対して、それぞれ、「それ収益?それ費用」という情報を加味して記帳してやれば、それが、複式簿記、という事になるのではないかと。ただ、現金の移動だけを見ているだけであれば、現金が入ってくれば収益だし、出て行けば費用ではないのか。わざわざ「複式化」する必要があるのか、というご指摘もありましょう。

そこで、前回お話した「発生主義」が関わって参ります。そうです。費用には、現金で出て行ったものもあれば、将来払わなければならないモノもあります。収益には、現金で貰うモノもあれば、将来貰う「約束」をしているモノもあります。更には、費用でも収益でもなく、「資産」という形で、一旦、蓄えられる支出もあります。

これら、損益情報の把握と、現金の増減とを結びつける為に、いちいち、現金の増減について、「何のために支払ったのか」「どういう理由で貰ったのか」という「理由」を、個々の取引にくっ付けて、記録しておく必要が生じた訳です。

 「複式」という表現は、一見、解り易いのですが、2つの形式が内在しています。つまり、一つの経済取引を、右と左にかき分ける事で、以下の事を表現しています。

1.プラスとマイナスを表現する

2.損益(交換)情報を付加する

例えば、現金は複式簿記上の表記ルールでは、わざわざ符号を付けなくても、左に書けばプラス、右に書けばマイナスを表す、というのがお約束です。費用は左に書けばプラス、右に書けばマイナス。いやいや、最初からプラス・マイナス符号を付けて、記録すれば良いではないの、という事なのですが、確かにそうかも知れません。コンピュータを使って経理処理する現在、それで良いとは思いますが、まあ、人類の知恵ですね。

兎も角、損益計算をしたいが故に(=損益計算書を作りたい)、複式簿記を採用してきた歴史がある訳ですが、公会計においては、損益計算以外の計算もしたい!(=純資産変動計算書を作りたい)という、更に進んだ要請があります。

それは「非交換性の取引」というやつで、要は、強制的に召し上げられる税金で社会保障を行ったり、公債を発行してインフラ設備を建設したり、「拒みようがない」取引(?)が、公共団体には多いからです。それらの取引情報を簿記の世界に導入するに際しても、複式簿記が持つ形式性が役に立ちます。

何だか面倒な話になってしまいましたが、結局、現在行われている「現金主義・単式簿記」の会計処理方法から、「発生主義・複式簿記」に移行するのは、とてつもなく面倒な事なのでしょうか・・・。

まず、とっても大変だと思われている作業があります。発生主義に関わる部分ですが、最大の難関は、「資産評価」と言われている作業です。要は、現在の公共団体の手元に持っている財産の類を評価して(=値札を貼り付けて)、「資産」という形で再認識しなければなりません。公共団体は大変な「モノ持ち」ですが、これまで「どれくらいの価値があるか」という観点で、持っているモノを眺めた事がないと思います。庁舎は?学校は?道路は?・・・。

次に、大変と思われているけど、意外と簡単(?)なのではないか、というのが複式簿記の部分です。なぜかと言いますと、そもそも、公共団体においては、予算編成の段階で、その使途をかなり細かく定める事になっています。「教育目的で使う人件費は××円」「道路整備に使う工事費は××円」といった感じです。なので、仮に、予算編成したとおりに支出されれば、もう、予め支出の内訳が幾らいくらと決まってますので、「それほど」悩む事はありません。ただ、伝票が複式簿記の要求する「形式性」を具備していないだけです。

「それほど」は悩まないのですが、ちょっと困る事があるとすれば、それは、工事費として支出された予算を「費用」として処理すれば良いのか、「資産」として処理すれば良いのか、という点でしょうか。この点は、「費用とは何か」「資産とは何か」という、またもや、発生主義にまつわる定義の問題になりますが、公共団体における複式簿記は難しくない!という事で、なし崩し的に次回に続きます・・・。