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どのようにして自治体の働き方改革にICTを活用するか(2)『働き方改革』に向けツール導入の前に行うべきこと

働き方改革実現に向けてICTツールを活用する前に自治体が行うこと。

前回は自治体でICTを導入したにも関わらず、成果が生み出せない主要な3つの原因について述べてきましたが、では自治体では、どのような体制で、どんなどのような点に気をつけて働き方改革を進めれば良いのでしょうか。

私は以下の3点をお勧めしています。

  • ポイント1)組織として「成りたい姿」を具体化してトップの承認を得る
  • ポイント2)先ずは現有ツールでどこまで出来るのかを考える
  • ポイント3)新たなICTツールの導入には若手職員の意見を取り入れる

ポイント1)組織として「成りたい姿」を具体化してトップの承認を得る

自治体のみならず、組織が働き方改革に取り組む際に最も基本的なことではありますが、昨今では「働き方改革」という言葉が流行りになってしまったために、基本的なことを置き去りにして、ICTツールの調達に走ってしまう傾向が見受けられます。
やってしまいがちなこととして、「働き方改革」=「時間外勤務削減」、「年休取得率向上」などが挙げられます。これらをゴールに設定してしまうと、数値目標の達成がゴールとなってしまい、業務の効率化や無駄の削減を行うことなく、「定時でシャットダウン」「庶務事務システムで休暇を入れないとエラー」といった強硬策を取ってしまい、職員のモチベーションを下げてしまいます。
自治体の最大目標は「住民福祉の向上」「地域の活性化」にあるはずです。数値目標を作るのであれば、「窓口対応時間の増加」や「現場出動回数の増加」などにして、そのために事務手続きに係る時間をいかに減らすのかを考えるほうが、住民の理解を得られると思います。

ポイント2)先ずは現有ツールでどこまで出来るのかを考える

ゴールの設定が出来て、それをトップが承認したのであれば、次は行動フェーズとなります。ここで大事なことは、必要なものを揃えるには時間がかかるので、先ずは現有ツールでどこまで出来るのかを考えることです。
ほぼ全ての自治体では、事務を担う職員にはネットワークに接続されたパソコンが配備されており、ディレクトリサービスやファイルサービス、さらにはグループウエアといった事務の効率化に寄与するツールが整っています。
ファイルサービスがあるのに上司にプリントアウトしてチェックを受けている、グループウエアがあるのに会議の日程調整を電話で確認している、内部の会議であるのに参加者全員に帳合いした資料を渡しているといったような事例はありませんか。
これまでのルールを少し変えることで、効率化に繋がることは多数あります。先ずは現有ツールで何が出来るのかを試してみて、不足するものを調達するようにしてみましょう。

ポイント3)新たなICTツールの導入には若手職員の意見を取り入れる

保有している資産で課題が克服できないとなると、課題解決のツールを探すことになりますが、ツールに当たりをつけて予算獲得を目指すうえでは、多くの職員の意見を取り入れることが肝心です。
例え信頼できる事業者から良い提案をもらったとしても、それを複数の視点から確認しないと、複数の部門で使ってもらえるツールに成長させることが難しくなります。
私は課長時代に特に若手職員の意見を聞くよう心がけました。といいますのも、実際にそのツールを多用するのは、第一線で働く職員です。一方で導入に際しては、マネジメント層の了解を取り付ける必要があります。特に最終決定となる首長参加の会議では、必ずと言っていいほど「現場の職員の声を聴いたのか」と確認されます。
であれば、最初から意見を求めて、その声を意思決定の資料に盛り込んでおけば、トップは否定をいたしません。私はツールを使いこなしている外資系の民間企業などに若手職員を連れていき、彼らに「自分たちもやってみたい」という意識を持たせて、予算要求の資料を作成しました。
このように、働き方改革に取り組もうとする自治体では、しっかりと手順を追って進めていくことが肝心です。場合によっては、現有のICTツールだけでも十分に解決の余地がある団体もあるかと思います。一つ言えることは、今あるICTツールを使いこなせていない自治体では、新たなツールを導入しても効果が表れるか、甚だ不安であるということです。

ICT活用は働き方改革を援助する、最大限の効果が見込まれるツールである。

私は平成30年3月に区役所を退職後フリーのコンサルタントとして活動していますが、自治体からの依頼事項で最も多いのが「働き方改革」に関するものです。
依頼者の皆さんが私に期待していることは、私が豊島区役所庁舎移転の際に体験した「ICTツール導入による役所のワークスタイル変革」のノウハウだと想像しますが、私は打ち合わせの冒頭で「ICTはあくまでツールであり、働き方を変える1つの要因でしかありません。」と述べています。
私の仕事はICTコンサルタントですが、私はどんなシステムを構築すべきか、という技術論ではなく、システム導入でどう業務を改善すべきか、という観点での助言を行います。先に記述しましたが、自治体でICTを導入したにも関わらず、成果が生み出せない最も大きな原因は「システム導入と業務見直しとが一致していない」ことだと考えます。
一つの業務に係る情報システムを導入する際には、それを利用する職員がシステムに合わせた事務処理を考案することで、導入効果が図れますが、複数の部門が利用する情報システムにあっては、組織を越えた業務の見直しが必要となり、この際には「全体最適」の視点が必要で、一部門の改善活動では効果は生み出せません。ましてや、情報基盤と言われるような、全庁にまたがる情報システム導入時には、上層部からの「通達」などによる業務改革なしには効果は表れません。
私は①規則・慣習の見直し、②意識改革、③職場環境の見直し、④バリアフリー(誰もが恩恵に与れる視点)、そこに⑤ICTの活用が相まってこそ、働き方改革は実現すると助言しています。

先ほど「ICTツールは働き方を変える1つの要因」と記述しましたが、逆を言えば、ICTの活用なしには働き方改革の実現も困難です。これまでの「自席」でしか業務が進められなかった働き方を「自席以外でも」進められるようにするためには、電子化の推進や情報セキュリティの確保が必須要件となるでしょう。
2019年は入国管理法の改正に伴う外国人対策や消費税率引き上げに伴う経済対策など、自治体に新たな課題が発生します。現有人材で乗り切るためには、一人一人の生産性向上が必要で、そのためにも働き方を見直す必要があります。このコラムをお読みになった皆さんの自治体で、職員が活き活きと働く姿が実現できるよう、惜しみない助言をお送りいたします。

高橋邦夫(KUコンサルティング代表社員)

電子自治体エバンジェリスト、総務省地域情報化アドバイザー。豊島区のCISOとして、情報セキュリティ体制を構築して働き方改革を推進。その実績から平成27年、情報化促進貢献個人等表彰において「総務大臣賞」受賞。令和元年総務省情報通信月間表彰において「関東総合通信局長表彰」受賞。総務省「マイキープラットフォームによる地域活性化方策検討会」委員、文部科学省「情報セキュリティ対策推進チーム」副主査、J-LIS「セキュリティ支援コーディネーター」など。平成30年3月に退職・会社設立。

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