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病院の新築、移築の際に考えてほしいシステム関連のこと(2)

前回に引き続き、新築や移築、改修の際に留意すべきシステムに関することについて述べていきたいと思います。

((1)から(3)は前回のコラム「病院の新築、移築の際に考えてほしいシステム関連のこと(1)」をご覧下さい)

https://www.japan-systems.co.jp/column/healthcareit/detail/healthcareit_detail_1735.html


(4)適切な配管・機器設置スペースの確保

前回7の(3)適切な電源の確保の際に少し出てきましたが、情報システムを設置する場所について、考慮されていない場合が非常に多いのではないかと思います。

よくみられるのは、物品の収納場所、倉庫、EPS (Electric Pipe Space / Shaft、電気系配管の区画、スペース)などを利用している状態です。

そういった場合でも、ネットワーク機器などの専用の場所として確保し、空調などが備えられていればまだよいのですが、そうでない場合が多く、特にEPSを利用している場合、換気さえされていないことがほとんどです。

これはEPSが防火区画として設定されている場合がほとんどで、通常の感覚での換気が困難ということにもよります。

新築などの場合は、そういったことのないよう、広くなくてよいので、情報、弱電系の機器設置、配線に利用するスペース(施錠可能な)を確保するようにして下さい

また、そこから各所への配線が容易なように、配線用のパイプ、ラックなどを設置、途中には点検口を設けるなどの配慮をしていただければと思います

その区画には、換気、空調(機器の発する熱に対応できる容量のもの)、停電時も無瞬断で供給される電源などを準備するべきです。そうすることで、非常時の可動も確保できますし、機器についても、熱による故障や暴走を防止することができます。(これまで、複数箇所で、EPSに設置した機器の熱による故障の対応を経験しましたが、EPSはおよその場合、機器設置スペースとしては適切ではありません。現状機器がそういったところに設置されているのであれば、せめて防火ダンパーなどを備え、防火区画としての機能を阻害しないような形での換気を行うようにできるか、建築の担当などと相談して対応すべきです。

また設置の際に、HUBやSW、その他の機器をラックや専用のボックスに収める場合も多いものです。

不用意に機器が触られることを防止し、セキュリティの確保に有効ですが、その際も機器の吸気や排気が邪魔されないように、通気性のよいメッシュなどのものを選択するようにして下さい。インジケーターなどが解錠せずに確認できるとなおよいかと思います。

配管に関しては、情報機器を利用しない部屋はないという前提で、当初から配管を確保しておくということが重要です。当初使用する分だけではなく、十分余裕を持ってスペースを確保して下さい。

(5)機器操作スペースの確保

この「機器操作スペース」というのは、外来や病棟でのスペースのことです。

すでにある建物にHISなどを導入する場合には、元々パソコンやプリンターの設置を想定していないため、配線や電源の確保だけでなく、各機器の設置に苦労し、つかいにくいものになる場合がほとんどです。

新規に設計する場合には、当初からパソコンなどの端末、プリンタ、ディスプレイなどを設置することを想定して、余裕のある設計としてもらって下さい

特に最近のディスプレイは大きくなる傾向ですし、A3カラーレーザープリンタなどはA4モノクロに比べて大きくなります。さらに、薬剤のラベル、患者識別用のアームバンドの印刷などを行う小さなプリンタなどの設置場所も、考慮する必要があります。

プリンタの紙交換やメンテナンス、配線、放熱のことなども考慮し、背面のスペースなどにも余裕を持たせる必要がありますし、そのための電源、LANのコンセントなどの配置も重要です。

ナースステーションでは、病棟で利用するノートパソコンなどをどのように取り扱うのかも重要です

およその場合、病棟の病室を回る際に利用するHISの端末は、携帯端末だけでは十分ではなく、ワゴンに乗せたノートパソコンを利用しますが、そのことを考慮せずに、打合せテーブルなどを設置してしまうと、ワゴンを廊下などに置かざるを得ないという状況となってしまいます。

実際の引き継ぎなどをどう行うかも含め議論し、そのまま作業もできるようなワゴンの置き場所を確保するか、ワゴンに乗せた端末ごと納められるようなステーションにする事なども検討しておく必要があります。

看護師さんがステーションに戻ってからも、端末での作業はありますし、充電などもする必要があります。

さらに、病棟をまとめる看護師長さんなどは、事務作業も多いので、そのための独立したスペースなどもきちんと確保する必要があります。(看護師長さんは、労務管理その他の事務作業などの業務も多いことなどから、HISの端末とは別に事務用の端末を設置する場合がありますが、そういった端末の設置や書類を広げるスペースのことも配慮する必要があります。)

また、ノートパソコンを乗せるワゴンも十分に検討し、看護師さんの意見を聞き選択するようにして下さい。

どのようなものを乗せて移動するのかは、病院により異なると思いますのが、それらのものが十分搭載できること、移動時のキャスターの音が静かなこと、上下の可動ができマウスなどを利用する場合のスペースがとれることなどとともに、下部の構造などにより、操作姿勢が無理な姿勢とならないことなどもポイントです。

可能であれば、実際のワゴンをメーカーから見本として貸し出してもらい、看護師の方々に使ってもらって選ぶようにするとよいと思います。

病棟、外来で医師の利用するスペースについても、これまでのような観点で、十分に確保する必要がありますが、特にタブレットを使用する診療科では、その設置スペースを考慮する必要もありますし、場合によっては小規模なカンファレンスが可能なように、プロジェクタや大型のディスプレイなどの設置が求められる場合もあるので、十分診療科医師と話し合いをしてそのあたりを決めて行く必要があります。

とはいえ、全ての要望に応えることは、物理的な制約や予算から困難な場合も多いため、優先順位をつけることや、後からの整備も考えて、当初の整備をどこまで行うかを決めていくとよいと思います。

(6)院内の情報システム、ネットワークのマネジメント

これまで何度か述べたように、現在の医療機器はほぼ情報システム機器といっても良いものです。中身はコンピュータで、機器とその処理を行う操作部分、データを蓄積する部分はネットワークで接続されています。

よく見る脈拍や血圧などのバイタルデータを監視しているモニタ(バイタルモニタ)も、ネットワークで接続され、監視やデータの蓄積を行っています。

情報システム、ネットワークを利用しているのはHISだけではないという事です。

これら多くの機器が勝手に導入されると、非常に混乱、問題が発生しやすくなってしまいます。

ケーブルの配線などが混乱、場合によっては、誤接続などにより問題を起こす場合もありますし、無線LANの電波の輻輳などが発生するなども問題が起こる場合もあります。

さらに問題なのは、情報システム部門が把握していない状態で、リモート接続などが行われたり、私的な無線LANアクセスポイントなどが設置されたりと、セキュリティ上大きな問題につながる状況が発生することがあるということです。

こういった状況であることを認識し、情報システム部門と他部門が協力して、ネットワークなどの導入、設置に関してルールを作り、適切に把握、マネジメントする必要があります

問題を起こすことのないよう、全体としての理解も得ながら、各種のモダリティ導入、新たな業者の参入、医師や看護師他のパソコンの利用などについて、きちんとルールを定め、対応をするとともに、利用環境についてできるだけ要望に応えていく、できない場合は、それがどうしてできないのかを説明し、理解してもらうということが必要です。

また、ネットワークなどの設置を伴う機器導入について、条件によっては、HISのネットワークに取り込むようなことを検討した方が整理できる場合もあります。

LANケーブルなどについては、利用しているサービスごとに色を変えるなどの対応をしておくと、工事などをする際にもわかりやすいものとなります。

コネクタには、必ず用途、接続先などを表示するということも重要です。

情報システム部門としては、病院全体の機器に関して、情報ネットワークといった観点から関わり、マネジメントすることが求められているということになります。

(7)協力体制とチーム作り

最後になりますが、新築、改修の際、というより、普段からのものとして非常に重要なのは、その病院の協力体制とチーム作りです

HISのことだからといって、情報システム部門やその担当が単独で行うわけではなくそこには利用者である医師、看護師や技師、事務など多くの人が関係しますし、機器を供給する業者の方々も重要な関係者です。

およその場合は医療情報部門が中心になり病院の特徴的な対応である、委員会制(各診療部門の医師、看護師、中央部門の技師や事務職など)による運営などを行うことになるか、医事課などがシステムも所管して同様に対応する事が多いと思いますが、いずれにせよ、システムの供給、利用をする各関係者をつなぐこと、また、病院の経営層とも連携し、強力な指導力を持って、調整を行う体制、チームを作る必要があります。

そのためには、普段の運用から情報部門を所管する管理職がきちんと医師、看護師と調整できる力量を備えるとともに、信頼を得ておく必要があります。

病院の体制はそれぞれ異なり、情報システム部門の関わり方も一様ではなく、簡単にこうすれば良いという正解はありませんが、きちんとした根拠を持って相手と話し、十分なコミュニケーションをとりながら業務を進め、一つ一つの要望に応えていく、ことを続けると、良い関係は築くことができるのではないかと思います。

また、医師などは、非常に長期間の勉強をし、実習を経て業務に就いている高度な技術者です。情報システムについてもきちんと説明すると理解が非常に早いものです。同じ技術者として、その専門分野での適切な説明、対応ができるよう、常に切磋琢磨していくことが大切であると思います。

他のコラムでも述べた診療情報管理士、医療情報技師などの資格を取得することについては、まずそういったとっかかりになる勉強をする事にもなるので、何を勉強していいか迷った際には、まずそれらの資格を目指して勉強することなどもおすすめします。

情報システムのクオリティが上がり、トラブルなく運用がなされていることは、スムーズな診療につながり、結果として患者さんのためになることです。

その点を認識して、対応を進めていただければと思います。

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