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「これからの公会計を考える」第七回:新地方公会計制度の統一モデル(その1)

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「これからの公会計を考える」第七回「新地方公会計制度の統一モデル」(その1)をお送りします。

(新しい地方公会計制度の第一歩)

先の4月30日付けでようやく「今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書」が纏まりました。そこでは、現在、圧倒的多数派である「総務省方式改訂モデル」が発展的に解消し、今後は、固定資産台帳と複式簿記の導入を前提とした統一基準による財務書類の作成が要請される事とされております。

同報告書によれば、来年1月までに、固定資産台帳作成に必要な手引書の類が用意される事になっているそうです。それに併せて、台帳整備や財務書類作成に役立つツール類も提供されるとされているため、多くの自治体の皆さんはそれを待って、作業に取り掛かろうとお考えの事でしょう。

この「ツール」については、様々な憶測?が乱れ飛んでおりますが、「年度一括仕訳」を想定した場合、大雑把に申しますと「複式仕訳変換機能+固定資産台帳機能」のセットでないと使えないと愚考いたします。しかも、クラウドサービスとして提供されないと、「報告書」の考え方に沿わないモノになろうかと思います。「都度仕訳」となりますと、これは、お使いの財務会計システムの機能拡張的な色彩が強いと思いますので、簡単に無償で提供される様なシロモノでは無いと思うのですが如何でしょうか・・・。勿論、それ以外にも連結作業はどうしてくれるのだとか、そもそも保守はどうなるかとか、配られたツールがいきなり不慣れな職員が使えるレベルに錬成されているのかどうか・・・、などなどご心配の向きも多いことと存じます。

とまれ、「複式仕訳変換機能」は、財務会計システム等から出力される歳入・歳出データを内部に取り込んで、予めシステム側で保有する「仕訳パタン」に従って、複式伝票に変換する機能です。仕訳パタンなどは、来年1月に「標準的なもの」が提示されると思います。現行の「基準モデル」においても、標準的な仕訳パタンが提示されております。

また、「固定資産台帳機能」は、保有資産の棚卸し、資産評価(算定)等を行った各種資産データを格納し、償却対象資産に対しては、減価償却処理を施したりするモノです。もっとも、貸借対照表に計上される資産は、土地や建物だけではなく、無形であったり金融資産があったりして、広範に及んでおります。それらを全て登録できる台帳機能が用意されるとするなら、それは、「公会計資産台帳」というべきものかも知れません。また、「資産台帳」は、各種資産の期中異同なども管理出来る様に作られるのが一般的ですので、なかなか、凝ったシステムに成ろうかと思います。

 

(必要な作業項目と時期)

統一モデルでの財務書類作成に際して、標準的な改訂モデルから移行する場合は、下記のような作業手順になるではないでしょうか。

1.各種資産関連資料の確認
2.開始貸借対照表の作成手順確認
3.資産評価作業
4.仕訳パタンの確認
5.執行データ受領・複式変換(年度一括変換の場合)・非現金取引の仕訳入力
6.一般会計等財務書類の確認
7.連結作業・連結財務書類の確認
8.附属明細書の作成
9.議会・一般公表用資料の作成

7.〜9.あたりは改訂モデルでも共通の作業です。

これらの作業を何時頃始めるか、という問題は、実務担当者にとっては悩ましいところでしょう。平成30年3月に、新基準での財務書類公表が求められているとすれば、最初の公表対象決算は平成28年度分、という事になりましょうか。そうなると、理屈上は、平成28年3月末時点での「開始貸借対照表」が出来上がっていなければならないことになります。現在、平成26年5月であることを考えると、開始貸借対照表作成に掛けられる時間がそれほど残されている訳ではありません。特に、各種、資産を管理する台帳類が紙で管理されている場合は、それらのデジタル化の作業が発生してくる事もご考慮下さい・・・。

(固定資産台帳整備の流れ)

繰り返しになりますが、現在、総務省方式改訂モデルで財務書類を作成している場合、特に、問題になるのは資産等ストック情報の把握であり、開始貸借対照表作成に関わる部分です。これまでの総務省方式改訂モデルにおいては、当座「売却可能資産」として括られる範囲の資産の状況について把握すれば足りるとされていたため、いきなり全庁的なプロジェクトにならず、財政課を中心とした少ない人員で着手できるという安心感があったかも知れません。

ところが、新統一基準では、資産の把握作業においては、全庁的作業にならざるを得ない、との理解が必要です。それは、網羅的な固定資産台帳の作成が求められる一方で、現在は、各種の資産をバラバラに各原課において管理している場合が多いからです。

また、新基準においては、固定資産台帳作成にあたって具備すべきデータ項目として、「公共施設等総合管理計画」の策定に当たって有用と思われるものの整備が推奨されている点にもご留意ください。公会計で使う固定資産台帳と、施設の管理計画で使うデータには共通項が多いため、一度に整備してしまった方が少ない手間で済みます。多くの職員が何らかの形で関わらざるを得ない作業ですから、手戻りは無くしたいし、同じような作業は一度で済ませたいのが道理です。

下記の項目は、今般総務省から提示された「固定資産台帳に具備して欲しい項目」の中でも、「施設保全等に使えるはずなので、整備されたら如何?」とされている項目です。逆にコレだけで大丈夫なの?というツッコミも入りそうですが(実際に検討委員会でも入っておりましたが)、その辺の議論は、また、次回に書かせて頂きます。

出典:総務省「地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会報告書」

12頁、固定資産台帳の整備項目の例
②更なる活用として提示する項目

・取得財源内訳
・耐震診断状況(建物)
・耐震化状況(建物)
・複合化状況
・利用者数(件数)
・稼働率
・運営方式
・運営時間
・職員人数
・ランニングコスト