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「これからの公会計を考える」第四回:新地方公会計制度の会計モデル(その1)

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「これからの公会計を考える」第四回「新地方公会計制度の会計モデル」(その1)をお送りします。

■会計モデルの比較

表1 3方式の主要項目比較表

  基準モデル 総務省方式改訂モデル 東京都方式
税収の取扱い 持分(出資) 持分(出資) 収益
財源仕訳 必要 必要 不要
固定資産の算定方法(初年度期首残高) ○現存する固定資産をすべてをリストアップし、公正価値により評価 ○過去の建設事業費の積上げにより算定
⇒段階的に固定資産情報を整備
○売却可能資産は時価評価
○現存する固定資産をすべてをリストアップし、原則として取得額により評価
固定資産の算出方法(継続作成時) ○発生主義的な財務会計データから固定資産情報を作成
○その他、公正価値により評価
○発生主義的な財務会計データから固定資産情報を作成
○原則として取得価額にも基づき評価
台帳整備 ○開始貸借対照表作成時に整備
その後、継続的に更新
○段階的整備を想定
⇒売却可能資産、土地を優先
○開始貸借対照表作成時に整備
その後、継続的に更新
作成時の負荷 ○当初は、固定資産の台帳整備及び仕訳パターンの整備等に伴う負担あり
○継続作成時には、負荷は減少
○当初は、普通建設事業費の累計額と現実資産の差額の算定等に伴う負荷が あり
○継続作成時には、段階的整備に伴う負荷あり
○当初は、固定資産の台帳整備及び仕訳パターンの整備等に伴う負荷あり
○継続作成時には、負荷は減少
財務書類の検証可能性 ○開始時未分析残高を除き、財務書類の数値から元帳、伝票に遡って検証可能 ○なし
○複式簿記化すれば可
○基本的には財務書類の数値から元帳、伝票に遡って検証可能
財務書類の作成・開示時期 ○出納整理期間後、早期の作成・開示が可能 ○出納整理期間後、決算統計と並行して作成・開示 ○出納整理期間後、早期の作成・開示が可能

出典:総務省「中間とりまとめ(案)の参考資料(案)」掲載の表から作成
http://www.soumu.go.jp/main_content/000240690.pdf

先述のとおり、現在、総務省からは2つの会計基準が提示されておりまして、地方公共団体は、原則として、そのどちらかを選んで、財務書類を作成・公表する事になっております。実際には、総務省の2方式以外にも「東京都方式」や「大阪府方式」といった会計基準が、それぞれ東京都と大阪府から独自に提案されております。東京都方式や大阪府方式は、総務省の方式に比べて、より企業会計方式に近い形で提案されておりまして、東京都下や大阪府下の団体の中には、これらの会計基準を採用する団体もありますが、現時点では、ごく少数派に止まっている様です。例えば、東京都方式については、東京都はもちろんですが、他に町田市などが採用しておられます
https://www.city.machida.tokyo.jp/shisei/gyouzaisei/shin_ko-kaikei/dounyu.files/machida_no_shinkokaikei.pdf

また、大阪府方式については、大阪府・大阪市の他、吹田市が採用を表明しておられます。
http://www.city.suita.osaka.jp/var/rev0/0032/5687/shinkoukaikeiseido.pdf

さて、総務省の用意した「基準モデル」「総務省方式改訂モデル」の特徴とは何でしょうか(表参照)。細かく見て行くと、多くの論点がありますが、まず、作成手順という観点からのみ要約してみましょう。まず基準モデルですが、①資産の評価・算定については、開始初年度に、各団体に現存する有形・無形の資産を公正価値にて評価して、開始貸借対照表にリストアップする、②毎年発生する個々の取引については、ストック・フロー情報として網羅的に把握して複式記帳し、③財務書類の作成については、元帳から誘導法的に行う、ということになりましょう。

他方、総務省方式改訂モデルにおいては、①売却可能資産について特別にピックアップして時価評価を行うものの、それ以外の資産については過去の普通建設事業費の積上げにより算定し、②固定資産台帳や個々の複式記帳によらず、③既存決算統計情報の組み換えを以って作成する、ということになりましょう。この方式では、固定資産台帳の整備が必ずしも必須とされておらず(段階的整備は求められているが)、決算統計の組み換えによる作成方法によるため、これまで財務諸表の作成になじみの無かった団体では、取り組みやすい、とされております。

記述のとおり、新地方公会計制度推進の根拠となった「行政改革推進法」の理念に鑑みれば、「固定資産台帳の整備」は、譲れない所ではないかと思います。表2は、全国自治体がどの会計モデルを採用しているかについて纏めたものです。さて、次は、それぞれの会計モデルの具体的特徴を見て参りましょう。(つづく)

表2 財務諸表の作成状況

区分 合計 都道府県 市町村
作成済 基準モデル 161 3 158
総務省方式改訂モデル 777 38 739
その他のモデル 8 1 7
合計 946 42 904
作成中 基準モデル 34 0 34
総務省方式改訂モデル 229 1 228
その他のモデル 5 0 5
合計 268 1 267
合計 1,214 43 1,171

出典:総務省「地方公共団体の平成23年度決算に係る財務書類の作成状況等」掲載の表から作成
http://www.soumu.go.jp/iken/kokaikei/pdf/120701_01.pdf