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「これからの公会計を考える」第一回:新地方公会計制度の概要(前編)

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「これからの公会計を考える」第一回「新地方公会計制度の概要」を前後編に分けて、お送りします。今回は前編となります。

新地方公会計制度とは何でしょうか。現行、地方自治体において行われている会計制度とは何が違うのでしょうか。また、今のままでは何がいけないのでしょうか。導入するとどんな役立ちがあるのでしょうか・・・。と、そんな事をつらつら考えて行きたいと思います。

さて、新地方公会計という新しい仕組みですが、どういう経緯で導入が進められたのでしょうか。そこで、2007年(平成19年)に総務事務次官から全国団体に配布された「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針の策定について」という文書を読みますと、「行政改革推進法第62条第2項において、政府が、地方公共団体に対し、企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備に関し必要な情報の提供、助言その他の協力を行う」規定がある、という事に触れられています。

ここに出てくる「行政改革推進法」というのが、公会計推進の根拠なっていると分かります。この法律は、2006年(平成18年)に成立した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」の略称です。

どういう法律かといいますと、「小泉政権は2005年12月に「行政改革の重要方針」を閣議決定し、その内容を行政改革推進法として法律化、06年5月に成立した。法律は「簡素で効率的な政府の実現」を目標として掲げ、それを実現するために政策金融改革、総人件費改革、特別会計改革、資産・債務改革、独立行政法人改革の5つを重点分野としている。」(http://kotobank.jp/word/ から引用)とあります。

この時期は、小泉政権の後期で、官と民の役割分担を大きく見直そうとしていた時期でもあります。5つの重点分野のうち、「資産・債務改革」において、政府部門が持つ資産であって、不要不急のものは売却して財源の足しにしよう、という事が企図されました。後に、自民党と民主党の間で、埋蔵金があるとか無いとか、騒ぎになったのは07年の事ですが、これは、まさに公会計におけるストック情報の不備(無関心?)が関係していたと思います。

要するに、財政逼迫の折、毎年の財源を用立てするのに、上がってくる税収だけでは全く足らず、少しでも金めのモノは無いかと、身の回りを探した訳です。その際、あそこに使ってない官舎があるとか、そちらに要らない政府金融機関があるとか、モノの情報はあるのですが、さて、売却するとなった場合、一体幾らくらいになるだろうか、という価格に関する情報がありませんでした。そこで、「資産売却」を進めるためにも、「今どこに幾らくらいのモノがどのような状態で、在るか」という固定資産に関する情報の収集が求められる事となりました。これが後にご説明する固定資産台帳の整備の必要性であり、貸借対照表を作成する、という話になっていきます。

さて、「推進法」の62条2項ですが、「企業会計の慣行を参考」にすると書いてありまして、慣行って何だ、という事ですが、これは発生主義・複式簿記の事であると考えられます。地方公共団体の中でも、公営企業会計の一部は、既にこの方式を採用しています。

さらに、「貸借対照表その他の財務書類」とありまして、これらの計算書類、特に、貸借対照表は、地方公共団体にとっては目新しいものであり、従来の会計では作成が求められておりませんでした。というか、資産の概念が無かったので、作れなかったという事でもあります。

最後に、「(国が)助言その他の協力を(地方公共団体に対して)行う」となっていますが、これは、まあ、強制ではないという事ですね。この「強制ではない」という所が公会計の普及に影を落とした所でありまして、強制するからにはさぞや強力なご利益があるのであろうな、という、やや斜に構えたご意見や、他方で、強制してくれないと、本格的に導入したくてもなかなか予算が付かない、という切実な現場ご担当者の声まであって、悲喜こもごも、今日に至っております。

ということで、以上を整理しますと、現在、地方公共団体が、新地方公会計への取り組みに際して置かれている状況は、以下の様になろうかと思います。

1)現金主義・単式簿記による現在の仕事をやりながら(地方自治法が改正された訳ではない)、2)「報告書」に示されている「基準モデル」若しくは「改訂モデル」のどちらかを採用して(どちらかに一本化されている訳ではない)、3)財務四表を連結ベースで作成し(今回連結財務諸表が標準形とされている)、4)今後の制度改定にも備える、・・・必要がある(現時点で、基準モデル、総務省方式改訂モデル、東京都方式、その他独自基準等々、複数の公会計基準がある)。

 現金主義だの基準モデルだの、いきなりご説明も無しに飛躍した整理をしてしまいましたが、次回、その辺のお話を進めて参ります。

(後編につづく)