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自治体における民間連携に関するコラム(16) 小さな施設の統廃合<大きな施設の収支改善

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会 業務部長 寺沢 弘樹

多くの自治体の公共施設等総合管理計画は、総務省の推奨する旧来型行政の思考回路・地方財政措置を踏襲した短絡的な総量削減が目標とされ、各自治体では「総量削減のための」個別施設計画の策定作業や統廃合に取り組み始めている。しかし、先行自治体や多方面で指摘されているとおり、マンガやデータで理論的に説明しようとしても、利用者を中心とする市民の猛反対により炎上する事例が多発している。利用者にとっては大問題でも、大半のサイレントマジョリティーである市民は、反対はしないが援護射撃することもない(する必要がない)からである。

公共施設マネジメントでは、統廃合を進めるために公平性・透明性等を考慮して、客観的なデータを基に統廃合の優先順位を設定することが王道とされている。施設の設置年度・延べ面積・利用率などの様々なデータを収集・分析し、各施設のハードとソフトのデータをポートフォリオに落とし込み、評価が低い施設から順に統廃合を進めていくこととなるが、想定どおりには進まない。

市長や議会からは「もっと丁寧に説明するように」と諭され、ワークショップなども試行錯誤してみるが一向に利用者の理解は得られない。過去のコラムでも述べたが、公共施設やインフラの老朽化の問題を引き起こしたのは行政の経営感覚の欠如であり、予約システムを利用して適正に予約し、条例で定められた使用料・利用料を納めて設置管理条例に定められた範囲内で施設を利用する市民に、全く非はない。だからこそ、行政の一方的な都合での統廃合には反対するのである。

本稿では合意形成とは視点を変えて、統廃合が自治体経営に及ぼす効果を考えてみたい。前述のポートフォリオで抽出されるのは、「劣化が進行し、利用状況が芳しくない≒魅力が乏しい」地区集会施設などの比較的小規模な施設が中心になる。厳しい財政状況の中では、このような小規模施設の改修は後回しになり、魅力的なコンテンツの創出や投資が行われることなく、利用も周辺住民や限定的なサークル活動に限定され、更に評価が悪化する負のスパイラルに陥ってしまう。

だからこそ、行政はマジメに一生懸命、真っ先に統廃合すべき施設として山間部等の小規模な集会施設を位置づけ、長期間にわたり場合によってはコンサル等の支援も受けながら悪戦苦闘するわけだが、経営的に見た効果はどうだろうか。

山間部の資産価値が非常に低い(≒売却可能性や民間の進出意向の低い)土地に位置する老朽化した施設(≒固定資産台帳上の備忘価格1円)に対して、職員やコンサル(≒相当の人件費・委託費)を長期間にわたって大量動員(≒膨大な機会損失)して、しかも炎上してしまっては生産性ゼロである。奇跡的に住民合意を得て、あるいは政治的な決断により統廃合できたとしても、そこで得られるのは資産価値の低い土地・備忘価格1円の建築物と、毎年発生していた光熱水費・維持管理費等の若干のキャッシュアウトの抑制のみである。

このような施設は利用者の「顔が見える」施設であり、少数とはいえ彼らの生活の一部を切り取ることから、経営的な効果が低いだけでなく、市民の日常生活・感情の面などのマイナス要素も勘案すると、決して効率的・効果的な公共施設マネジメントであるとは言えない

公共施設・インフラの問題の根幹が経営問題であることに立ち戻ると、公共施設マネジメントのやり方は全く異なってくる。まずは全施設の収入・支出情報を収集・分析し、収入(現時点での収入は低くても経営改革によって相当の収入が発生しうる施設を含む)・支出の多い施設から順番に、支出の抑制と収入の向上のための様々な取り組みから始めた方が、経営的な貢献度ははるかに高いはずである。

 支出の抑制では、毎月の光熱水費の把握と要因分析・不要照明の間引き・バルブの開閉調整・空調設定温度と稼働時間の見直しなど、職員の手で今すぐにできることから、ESCOやバルクリースによる高効率空調・照明への更新、複数施設の各種設備の保守点検業務の包括管理、経営ノウハウに優れた指定管理者への更新といった民間ノウハウを活用したPPP手法も考えられる。

収入の向上では、有料広告や自動販売機など比較的簡易にできるもの、ネーミングライツ、未利用(・低利用)箇所の部分貸付、指定管理者の自主事業の裁量拡大などもできるだろう。

収入・支出が大きい施設は、一般的に大規模で立地状況も比較的良いはずである。大規模施設はコストの単位が大きいので、様々な取り組みによる経営的な効果も大きくなる。例えば、30,000千円/年の光熱水費が発生している施設の10%を間引き・運転調整等で削減できれば3,000千円/年の歳入確保と同等の効果である。ESCOで設備更新を含めて30%削減すれば9,000千円/年に相当する。

もちろん、小規模な施設であっても、施設総量削減はコスト削減に直結することは間違いないし、自治体の財政状況を考えると避けて通れる課題ではない。ただし、公共施設やインフラの課題は将来に発生するのではなく、現在進行形の喫緊の課題であること考えれば、後者から始めてはどうだろうか。このような地道なPPP/PFIを進めていく中で、施設のリアルな情報・利用者との距離感等の実践的・実務的ノウハウが徐々に蓄積され、経営感覚も習得し、公共施設マネジメントの幅が広がっていくのではないだろうか。

そして、統廃合を進めるのであれば(経営的な効果が低い)小規模施設ではなく、統廃合することによって自治体経営に貢献しうる(≒バランスシートに反映されうる)規模の施設から着手すべきで、単純な施設総量削減ではなく、削減した先に「もっと明るくて楽しい未来」を具体的に提示する必要があるだろう。

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