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地域医療の視点から(2) 地域で「かかりつけ医」とけんかをしない在宅医療のあり方

ジャパンシステム株式会社
公共政策・行政改革ディレクター
げんきらいふクリニック院長
山中光茂

「地域包括ケア」のこれからの課題について、各地域において行政の方々と話をするときに必ず出てくるのが「医師会」というハードルなのです。医師会の皆様は長年にわたって地域医療を支えてきた地域における「かかりつけ医」であり、そのことに対して強い誇りを持たれています。地域医療のシステムを守ってきたのは自分たちであるという自負が、医療に素人の行政や介護に関わる他の職種の方々の意見を聞き入れないことが多く、医療介護に関わる自治体職員からすると常に「忖度」し、過剰な配慮をしなくてはいけない存在となっているのです。

自治体が地域における介護職種の方々とともに、「地域包括ケア」を進めていくときに大きな「障壁」となっているのが、「かかりつけ医」の存在でもあるのです。自分たちが「今」を守っているという誇りがある医師会にとって、「今」のシステムを「未来」に向けて変えようとする方向性は、かなり慎重に進めないと大きな抵抗にあってしまうのです。

私も地域行政も、多くの介護職種の方々も「かかりつけ医」の役割を否定しているわけでは全くありません。逆にその存在と役割の大きさは誰もが認めているのです。救急搬送までは必要のない1次救急の担い手としての役割もあれば、自分で受診ができる患者の地域医療の大きな受け皿として「かかりつけ医」の方々は地域から尊敬を受ける存在になることも多いですし、当然不可欠な存在です。ただ、自治体が主体となった24時間体制の一次救急の構築や地域に在宅医療のシステムを広げるなどという際には、自分たちのテリトリーが奪われる、自分たちがやってきたシステムが壊されるという意識のもとで「医師会」というまとまったかたちでの反発が必ず生まれるのです。

特に、「在宅医療」を行政が支援というと、地域の医師会からは「私たちの患者が奪われる」「私がいるから在宅医療はこの地域に必要ない」そんな話を多く聞くことになるのです。本来、在宅医療とかかりつけ医は役割が全く違います。そもそもルールとして病院の外来を受診できる患者さんは在宅医療の対象ではありません。ただ現実には、多くの在宅医療機関が症状の安定しており、外出できる患者を訪問診療しており、急変期には地域の二次医療機関に丸投げしているという事実もあります。だからこそ、本来は地域行政が主体となって「在宅医療の推進」をはかるときには「かかりつけ医」と「在宅医療」の役割分担を明確にすべきなのです。

地域の二次医療機関やかかりつけ医では「積極的治療」が困難となり、またADLも落ちて通院が困難になった患者が、お看取りまで家で最期を迎えるための医療的サポートをしていくことが在宅医療の本質となるべきなのです。自分自身で動ける方の生活習慣病の管理などは可能な限り地域の「かかりつけ医」が役割を持つべきであり、治療可能な早期ガンや緊急な対応が必要な専門医療においては二次医療機関が役割を担うべきです。在宅医は、地域における多職種と連携しながら、積極的治療ではなく、症状の緩和を中心とした重度ながん患者や一人暮らしの認知症でADLが低下をして通院ができない患者など、在宅において生活したいけど、病院には通院も入院もできない環境の方々への「生活支援」も含めた医療をしていくという役割であるといえるのです。

 ともに地域のいのちや幸せを守っていくために「医師会」とけんかをするのではなく、ともに地域医療を支えるパートナーとしての「在宅医療」の位置づけを明確にしていくことが、これからの地域での高齢化に対する医療システムを創っていくうえで不可欠であるといえるのです。

 

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