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自治体における民間連携に関するコラム⑩ ユルクトンガル

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会 業務部長 寺沢 弘樹

公共施設等総合管理計画の策定作業が完了し、多くの自治体では総合管理計画の策定指針に示された施設類型別の個別施設計画やエリアごとの再配置計画の策定作業にシフトしている。非常にマジメな自治体の姿であろうが、個別施設計画の策定後には更に施設ごとの年次計画・長寿命化計画やPDCAサイクルを意識した実施計画でも作るのだろうか。

無限の計画策定スパイラルが続くなかで、総論で作成したはずの総合管理計画は社会経済情勢の変化による不整合が生じるだけでなく、人口減少・財政状況の悪化・施設の老朽化は加速度的に進行し、気がついたら絵に描いた餅、悪い場合には総合管理計画の存在が実践を阻害する要因になりかねない。いったい実践はいつになったら始まるのだろうか。

行政は、旧来型の行政思考・手法による公共施設マネジメントが通じないことに薄々と気づいているのではないだろうか。「行政らしく」マジメに庁内の関係各課、利用者を中心とした市民、選挙で選ばれた議員の意見を全て聞きながら、「みんな」に配慮して一つずつ丁寧に合意形成していくことが王道だと盲目的に信じ、日々、心と体を疲弊させていないだろうか。

しかも、顔の見えなくなった「みんな」の意見を反映したものは必然的に総花的・抽象的にしかならず、施設総量縮減の数値だけが目的化されたネガティブな未来や、形式的に複合化・統廃合された施設・サービスに魅力は存在しえない。魅力がないから民間企業もビジネスとして参入する意欲を持てず、まちは衰退のスパイラルに陥るのである。当然に公共施設マネジメントは進まないし、総合管理計画を含む一連の計画も従来型行政計画の二の舞になってしまう。

では「魅力的な場」とは何だろうか。紫波町のオガールプロジェクト、大阪市の大阪城公園や天王寺公園、旭川市の旭山動物園など地域のみならず遠方からも人がめがけてくる場は、そこでしか得られない独自性で「トンガって」いる。しかも、これらの場は◯◯禁止などの立て看板が支配するのではなく、利用者が社会的な常識の範囲で様々なアクティビティを創出できる「ユルい」場でもある。ユルクトンガルとは、オモロイこととほぼ同義であろう。万人受けを狙うのではなく、明確にターゲットを絞ったオモロイ・価値があるサービスに人は集い、その対価を支払うのである。

旧来型行政では関連する上位法、各種補助事業、「みんな」を意識した合意形成、(近隣を中心とした)他自治体とのレベル感、トラブル発生時のリスクヘッジ、財源が乏しいことによる閉塞感などから「ユルクトンガル」ことを躊躇させてしまう。前例踏襲・縦割り・既得権益・既成概念などの旧来型行政文化は、職員数削減、権限移譲やニーズ多様化に伴う業務量増加、コンプライアンス、一部の議員や市民からのネガティブな監視等で拍車がかかり、いかにリスク発生を抑制しつつ規定の業務を粛々とこなすか、「カタクオダヤカ」であることが優先されてしまう。

筆者は公務員を経験していたので確信しているが、残念ながら職員個人の単位でユルクトンガルことを志向しても、行政が組織としてユルクトンガルことは簡単ではない。自発的にユルクトンガルことが難しい、あるいはそのノウハウ・マンパワーが自治体内部に不足しているのであれば、ユルクトンガっている民間事業者と連携(=PPP)すれば良い。

立川市の旧庁舎をリノベーションした立川市子ども未来センターは、プロポーザルコンペで選定された指定管理者が、2階の大半をマンガに特化した「立川まんがぱーく」として整備し、トンガッた自主事業を展開している。図書館法に基づく図書館ではないし、押入れを模した空間ではだらしない恰好で本を読むなど、館内にはユルク楽しむ仕掛けが散りばめられている。

大阪城公園では、指定管理者の公募要件からしてユルクトンガっており、民間事業者の投資回収期間を意識した20年を指定管理期間に設定するとともに、投資やイベント等の裁量を十分に民間事業者に付与している。金色に塗装した御座船で内堀を巡るサービスは、1,500円/人という強気の料金設定にも関わらず、筆者が訪れた際も満席状態で、更に15分間隔で運航していることから相当の収益につながっているのだろう。乗船している人々も1,500円の価値があると判断して対価を支払っているのである。ユルクトンガルとは、こうした(非日常の)価値あるサービスを楽しめることである。

行政財産(公の施設)で難しけば、当該施設を普通財産に切り替えた上で条件付き貸付することも選択肢となるだろう。八代市では廃校となった宮地東小学校を普通財産として貸し付け体験型宿泊施設として活用しているが、理科室をバーとして活用するだけでなく、婚活パーティーやここでは記せないような超ユルクトンガッたイベントが夜な夜な繰り広げられている。

ユルクトンガルことで人が惹きつけられ、ビジネスが発生する。つまり、緻密な事業採算性のうえに成立しているのである。こうした資金調達もPFIの一種だと言えよう。

すべての公共施設・サービスが一律にユルクトンガル必要はないし、ユルクトンガルことで公共施設やインフラを取り巻く課題がすべて解決できるわけでもない。しかし、総量削減だけを目指した経済学的でネガティブなアプローチのみでは明るい未来は提示できないし、公共施設再編のボードゲームのような机上のおママごとで未来は作れない。もちろん、総合管理計画や再配置計画も実践なくしては存在価値すらない。

どこかで誰かが「ユルクトンガル」こと(それを周囲が許容すること)で、少しずついろんなことがリアルガチで前向きに変わっていくのではないだろうか。

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