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自治体における民間連携に関するコラム⑨ 公共施設等総合管理計画とPPP/PFI

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会 業務部長 寺沢 弘樹

公共施設等総合管理計画では、総務省が策定指針において「できる限り数値目標を示すこと」、ホームページで幾つかの自治体を紹介したことなどから、「30年で30%の施設総量の削減、新規施設は一切建設しない、改築する場合は複合化・多機能化を原則」というハコモノ3原則なるものが一世風靡し、多くの自治体の総合管理計画の目標となった。そして、これらの目的を達成する魔法の手法がPPP/PFIとされている。

PPP/PFIが魔法の手法でないことは過去の本コラムでも何度も記したが、本稿では総合管理計画とPPP/PFIの関係を考えてみたい。まず、総合管理計画の総量縮減目標は、多くの自治体で「現在と同程度の投資が可能である」ことを前提にしている。今後、少子・高齢化や人口減少が確実に進行する中では、現在と同程度の投資的経費を確保することは現実的ではなく、当然に数値目標もこれに呼応して更に厳しいものとする必要があるはずだ。筆者の知る限りでは施設総量の65%削減を目標として記す自治体もあり、その達成のためには理論上、庁舎と一部の学校、清掃事務所しか(すら)維持できないこととなる。

更に最大の問題だと考えているのが、「新規施設は一切建設しない」ことである。ハコモノとサービスを分離して考え、新たに必要となった公共サービスは「民間が担う・民間施設を活用する」ことを原則としても、数十年にもわたりこうしたことが本当に可能なのだろうか。また、それが自治体経営と言えるのだろうか。経営とは、投資すべきところには重点投資して再投資の原資となるリターンを発生させ、抑制・停止するところは迅速に判断して被害を最小限に留めるなど、戦略的な判断行為を繰り返すことであるはずだ。数十年にわたる新規施設の建設禁止は現実的にありえないし、投資を諦めてしまったまちに魅力は残るのだろうか。理解いただけていると思うが、何もハコモノ建設を推奨しているわけではない。

では、なぜこうした概念が一般化・展開したのだろうか。総合管理計画の策定要請も含め、公共施設マネジメントがこれまでの行財政改革の流れを踏襲し、既存の行政の枠組みを前提とした歳出サイド一辺倒の事業・コスト削減に依存しようとしているからではないか。こうした思考停止した状況では、PPP/PFIも「PFI=PFI法に基づくPFIで大規模事業の建設費平準化のための手段、PPP=アウトソーシング・事務コスト削減の手段」でしかなく、創意工夫に溢れた魅力的なものにはなりえない

また、多くの自治体担当者が異口同音に語るのが「総合管理計画を策定したが、次に何をしていいかわからない」である。「自治体を経営する」ことから考えれば、やることがわからないはずはないだろう。総合管理計画で多額の業務委託コスト(や膨大なマンパワー)を投入したのだから、その過程の中で次の一歩は見えている、むしろ並行して歩みを進めているのが本来の姿であるはずだ。

更に財政状況が厳しいにも関わらず、明らかに将来的な財政負担が考慮されていない著名な建築家による大型の複合型公共施設のプロジェクトも日本各地で進められている。二次元の総合管理計画をリアルな現場に反映して三次元化するうえでは、①既存の思考回路・働き方(≒行政運営)の変革、既得権益との決別といった「意識面の改革」と②具現化していくための資金・ノウハウ・マンパワーの調達という「物理的な要素」が必要である。

この2つの要素の相関関係は密接であり、自治体をいかに経営するのか真摯に考え、必要な資金・ノウハウ・マンパワーが行政内部に不足していることを認識できれば、「生きるための手段」としてPPP/PFIが選択肢として登場するはずである。総合管理計画で記した数多くの課題を具体的に解決していくためには、一つずつの要素から着実に進めるしかないだろう。

例えば、未利用地・不要資産の整理を急ぐのであれば、青森県や浜松市のように公有財産の売却業務を不動産会社に包括委託することが選択肢の一つになるだろう。施設の維持管理コストを抑制しつつ、管理の質を高めるためには流山市・我孫子市・廿日市市で行われている複数施設の各種保守点検業務をビルメンテ会社に包括業務委託することも考えられる。

小さな歳入でも確保しようとすれば、行政財産の使用許可で行っている自動販売機を貸付にかえて一般競争入札に付し、更に設置箇所を大幅に拡大すること、公共施設に有料広告を掲載することもできるはずである。指定管理者制度では利用料金制を採用するとともに、指定管理者の自由度を最大限に高め、かつ投資回収を考慮した期間を設定することで、大阪城公園のように指定管理料を委託費として支出するのではなく、歳入として収益の一部を自治体に納入させることも現行制度の中で行われている。

八代市では廃校となった小学校を普通財産として民間事業者に貸し付け、オーナーが柔軟なアイディアとネットワークで様々なイベントを開催し、自由度の極めて高い体験型宿泊施設として活用している。

PPP/PFIは公共施設の建設・複合化・統廃合のためだけ、あるいは内閣府のPPP/PFI導入のための優先的検討規程で記された総事業費10億円または年間の維持管理費1億円以上の事業のためだけに存在するわけではない。リアルな現場での小さな課題解決のために活用されているのが実態であり、更にこれらはPPP/PFIの導入や総合管理計画から着想されたものでもないだろう。

総合管理計画の策定後、何をしていいかわからなければ、データではなく、総合管理計画で記された施設・現場・周辺のまちをもう一度じっくりと見て、施設所管の担当者・利用者・民間事業者などの声を聞いてみよう。そこで感じたリアルな課題を自分たちの手で一つずつ解決していく方法の一つが、結果的にPPP/PFIではないだろうか。

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