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都市計画と公共施設マネジメント④ 居住誘導区域の設定について

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
首都大学東京助教 讃岐 亮

立地適正化計画の策定を終えた自治体が2017年4月末時点で106あることは前回のコラムで述べたが、ある項目に着目して分類すると面白いことがわかる。それは、居住誘導区域を設定しているか否か、である。本稿からは、この居住誘導区域についていくつかのトピックをたてて、述べることとする。

居住誘導区域とは、「人口減少の中にあっても一定エリアにおいて人口密度を維持することにより、生活サービスやコミュニティが持続的に確保されるよう、居住を誘導すべき区域」(国交省Webサイトより引用)である。区域は、これまでのコラムで扱ってきた都市機能誘導区域を包含する形で、ないしは地域によっては独立して、領域設定される。実態としては、従来の市街化区域をもう少しだけ小さくしたもの、と考えてあまり間違いはない。

さて、その居住誘導区域であるが、106の自治体のうち、居住誘導区域を設定しているのは、60自治体にとどまる。つまり46の自治体は、居住誘導区域を設定していないのである。これはなぜだろうか?

居住誘導区域を設定しない立地適正化計画を見ていくと、その設定は「2年後」とか「平成29年度中」「平成30年度末まで」といった記載がある。これだけを見れば、居住誘導区域の設定に、都市機能(誘導施設)の設定よりも頭を抱えているのでは?という想像が成り立つが、実態としてはそうではないようである。

そもそも、居住地というのはそう簡単に動くものではない。我々は、就職・進学・結婚といった生活の変化によって引っ越しを行うのが基本である。これらは居住地変更の一般的タイミングであり、それ以外は、よほどの理由がない限り転居することは稀である。

また、憲法22条に規定されているように、居住地選択の自由は保障されるべき権利であり、行政が居住地を強制的に決めるようなことは「公共の福祉に反しない限り」発生し得ないし、既存の住宅地を強制的に移動させるようなことも「公共の福祉に反しない限り」ないはずである。
そして立地適正化計画もまた、直接的に居住地変更を促すようなことはない。居住誘導は計画の最終的な目標だが、直接誘導ではなく、そのために都市機能をエサとした間接的誘導を行うのである。それらを踏まえると、立地適正化計画の計画策定順序として、居住誘導の区域よりも先に、都市機能誘導の区域設定、施設設定が先に来て然るべきである。

つまり、計画策定と実行を早い段階から着手して欲しいという計画企画側の論理と、実際には大きな悩みのタネである「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」の設定について同時並行は厳しいという現場側の要求が、優先順位を考えて後者の設定を後回しにしても良いという落としどころに着地した格好であろう。必ずしも、大きな問題を後回しにした、ということではない。

なお、最近耳にする話題として、不動産業者の一部で、立地適正化計画は資産価値形成に大きな影響を与えると喧伝されているが、それが居住誘導区域設定を遅らせているのでは?という推測は成り立つ。しかし、個人的にはそれはあまり影響がないと考えている。

実際に、20年後、30年後、40年後には、この計画の実効性が高ければ高いほど、その影響が現れているだろう。むしろそうなることが、理想かもしれない。ただ、先進自治体へのヒアリングから、立地適正化計画の住民説明会等では自身の土地の資産価値の変化について敏感に反応した住民の方々はほとんどいなかった、と聞いており、計画策定段階においては、上記のような影響は小さいのが実際だと言える。

それらの噂の中には、立地適正化計画が居住地を狭い地域にまとめてしまう計画である、という誇張表現や、最新の情報は市議会議員に聞くと良い、などというものもあり、情報の正確性が必ずしも担保されていない状況がある。蛇足ながら、不正確な情報に踊らされないようにすることは、この立地適正化計画に関連する情報についても同様である。

計画の策定業務を、業者に丸投げしてしまい、自身は計画の内容について何も理解できていない、という状況に陥るよりは、優先順位を検討し、自身が管理できる仕事量でスケジュールを立てて計画策定に取り組んだほうがよほど良いことは、言うまでもない。翻って、公共施設等総合管理計画の策定については全国の98%の自治体が策定を終えているが、ほとんど理解できていない、という事例がちらほらあることは耳にすることであり、この反省は立地適正化計画の策定に活かされるべきであろう。

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