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都市計画と公共施設マネジメント③ 居住を誘導するための「都市機能」とは

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
首都大学東京助教 讃岐 亮

国土交通省Webサイトによれば、2017年4月末までに、106の自治体が立地適正化計画の策定を終えている。パイオニアとなった箕面市の計画公表が2016年2月15日であったこと、この1年で100を超える自治体が公表までこぎつけたことに鑑みれば、人口減少と都市の縮退に直面する自治体の危機意識が垣間見えよう。
さて、前回のコラムで触れた、立地適正化計画策定の際、もっとも悩みが深いのは「誘導施設(都市機能)の設定」のようである、という趣旨の文章を記した。本稿では、2017年6月現在に公表されている計画を俯瞰し、様々悩んだ末に先進自治体が出してきた回答から、都市機能の捉え方の例を紹介したい。

まず策定第一号の箕面市を見てみよう。
箕面市立地適正化計画PDF
箕面市の誘導施設の種類は、「医療」「商業」「子育て」「介護福祉」の4種に整理できる。詳しく見ると、4つの誘導区域(実際には飛び地設定されている区域もあり実質6つであるが)それぞれで、地域特性に応じた誘導施設を設定している。たとえば医療系施設について、「病院」と記載されているのは北部区域のみであるが、「診療所」まで含めると東部区域でも設定されているし、東部区域では大規模or特色ある「医療施設」との記載がある。あるいは、「食料・日用品店舗」は北部と東部に記載のある施設である。
これらから、特に北部地域については日常的小規模の施設まで含めて、地域を集約させなければいけないという市の意志が見て取れる。ただし、「子育て支援施設」については、北部区域のみ、記載がない。これは何らかの事情により、集約対象の誘導施設として記載できなかったのであろう。また、「通所型障害福祉施設」「教育文化施設」は全ての区域で共通して設定されている施設である。


箕面市に次ぐ第二集団の一つである花巻市は、「病院」、「保育所」、「福祉施設」、「図書館」、「大学・専門学校」、「1000㎡を超える小売店舗」、「劇場・映画館等」を誘導施設として設定している。
花巻市立地適正化計画PDF
なお、花巻市の都市機能誘導区域は花巻市役所をおおよその中心とする市街地に設定されており、市内ではこの1区域に限られる。そのため、地区毎の差はそもそも生まれない。

中核市である宇都宮市も、区域ごとに誘導施設を変えている。医療、商業、福祉、子育てといった種類の施設を設定している点では、花巻市と似ているが、それに加えて「金融機関」と「行政施設」を設定している点に特徴が見られる。これらは、地区毎に設定の有無が異なる。
宇都宮市立地適正化計画PDF

釧路市は都市機能誘導区域を8地区有する。全地区で「1500㎡以上の食料品スーパー」と「内科を有する医療施設」が誘導施設として設定され、区域ごとに有無に違いのあるのは「図書館」「大規模集客施設」である。このように、誘導施設は4種類のみという点が特徴である。
釧路市立地適正化計画PDF

鶴岡市は、都市機能誘導区域を2地区(実質3地区)有する。誘導施設としては「行政」「介護福祉」「子育て」「商業」「保健医療」「金融」「教育文化」が設定されており、オーソドックスな設定と言える。
鶴岡市立地適正化計画PDF

小田原市の都市機能誘導区域は、「広域中心拠点」「地域中心拠点」「地域拠点」の3つのレベルに分けられ、それぞれで対象とする施設要件が異なる制度設計となっている。全体の枠組としての施設種類は「行政」「文化交流」「医療」「福祉」「子育て」「商業」の6種類である。
小田原市立地適正化計画PDF

和歌山市では、都市機能誘導区域を「中心拠点」と「地域拠点」とに分け、それぞれで対象とする施設要件が異なる。この仕組みは小田原市と共通である。ただし、施設種類は「医療」「商業」「教育文化」「子育て」の4種類に絞っており、福祉系の施設が設定されていない点に特徴がある。
和歌山市立地適正化計画PDF

淡々と事実を羅列してきた。これらから言えるのは下記の2点である。 まず、共通するキーワードが見出せるようで、自治体の規模、策定の時期等、様々な要因により実際に設定される誘導施設の種類は異なることである。立地適正化計画の策定手引きで示唆があった福祉施設は、必ずしも設定される訳ではない状況であり、計画策定を行う主体である行政施設が設定されることは稀である。一方、「子育て」「医療」「商業」については、共通して取り上げられるキーワードである。 そして、誘導施設の立地を規定するための都市機能誘導区域について、国交省の手引きに沿って1種類のみ設ける自治体と、いくつかのレベルに分けて区域指定する自治体があること、である。更に言えば、都市機能誘導区域が複数ある自治体において、レベルに応じて施設要件が変更されているものと、そのような設定をせず地区毎に施設種類を規定しているものがあった。

現在策定中の自治体、あるいはこれから着手する自治体には、実態としてある程度の柔軟性をもって都市機能設定が行われている、という事実について参考にしていただきたい。

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