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ITの習性を知る① みんな大好き「ベンダーロックイン」

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
データキュレーション株式会社 代表取締役 寺澤慎祐

記念すべき第一回のコラムのタイトルを何にしようかと考えた結果「ベンダーロックイン」を選びました。「ベンダーロックイン」は古くて新しい言葉ですが、ここからスタートしますのでお付き合いください。

ベンダーロックインとは「ある特定のメーカーや販売会社がユーザーを自社製品で囲い込むこと」です。まず、囲い込む側であるベンダー側の論理からみた時に「なぜ囲い込むのか?」というと、「自社の顧客が競合他社に奪われないように参入障壁を高めたいから」です。我が社でなければいけない理由が強ければ強いほど顧客は競合他社に移ることが難しくなります。
航空会社のマイレージはその典型例で、日本航空でマイレージが溜まっていて、そのマイレージを使ってクラスアップグレードができ、その旅行で更にマイレージが貯まると、全日空に乗り換える理由が見つけづらくなります。

次に、ユーザー側の論理から見た時に「なぜ囲い込まれたいのか?」というと、「誰もがちょっとした束縛が好きだから」ではなく「高いスイッチングコストを払いたくないから」です。
何かしらの理由で初めて選択したベンダーと長い付き合いをしていると、細かいことを言わなくても相互理解が進むので、長い付き合いをしているベンダーの方が楽です。多少高いかな?と思ったとしても、便宜的な相見積もりを他ベンダーから取り、それを既存ベンダーに見せて安くさせて、既存ベンダーと付き合い続けます。違うベンダーに乗り換えるということは、相当な努力と費用を要するのです。

別にベンダーロックインされていることが悪ではなく、「自分自身によるガバナンス」を差し出す代わりに「高くても安心」を手に入れていることを理解することが必要です。

IT業界のベンダーによるベンダーロックインには2つの種類があります。それは「テクノロジーロックイン」と「コーポレイトロックイン」です。あるいはその両方です。

日本の多くの方々がイメージするベンダーロックインはコーポレイトロックインのことだと思います。つまり、テクノロジーはその都度の最新技術や最新製品を使い、製品や技術が違えども結局は同じベンダーから購入せざるを得ないことです。なぜそうなるかと言えば、自社の業務や自社のルール、やり方について一番良く知っているのはそのベンダーだということだからです。ですからメインフレームやオフコンの時代にA社とお付き合いしていれば、時代がオープンになるともクラウドコンピューティングになろうとも、A社とおつきあいし続けるということになります。

もちろん、ベンダーの営業や技術者が優秀だということもあります。
このコーポレイトロックインの長所は、ロックインされる要因の反対な部分である「このベンダーは当社のことをよく知っているから安心だ」「このベンダーは長い付き合いだから色々と融通が効く」と言ったことなどです。
短所は、そのベンダーの能力以上のシステムは提案されないし開発できないことです。たとえユーザー側が最新技術を提案して開発しれくれと言っても、不慣れな技術やリスクを考えて対応しないことが多くなります。

IBMのデータベースからOracleデータベースになろうが、COBOLからJavaになろうが、クローズドソースソフトウェアからオープンソースソフトウェアにしても、結局はA社に任せなければならない事になってしまいます。
下手するとユーザーは自分で要件定義もせずに過去の要件を踏襲するようなことをすると、発注者であるユーザーよりA社のエンジニアの方が自社業務をよく知っているという間抜けな事態にもなります。結果、市場ニーズや顧客ニーズに柔軟に迅速に対応したシステムを作ることができなくなります。

もう一つのベンダーロックインはテクノロジーロックインです。
マイクロソフトやIBM,オラクルのようなテクノロジーベンダーはインテグレーションベンダー(注)やユーザーが自社技術や製品を使ってくれるように促し、自社技術や製品によるロックインを行います。
地方公共団体の住民向けのWebサービスやメガバングの顧客向けのWebサービスがマイクロソフト社のインターネットエクスプローラーでないと正常に動作しないため、アップル社の端末を使っては利用できないことになります。
ORACLE社データベースの独特な開発手法を使うと、他社データベースへの移行や開発が困難になりORACLE社データベースを使い続けることになります。このようなことが今でもあるのです。
(注)NTTデータや富士通、日立などはテクノロジーベンダーではなく他社の製品や技術を使ったインテグレーションベンダーだという意味合いです。

テクノロジーロックインの長所はある特定ベンダーのロックインであれば概ね上位互換が維持できるということです。マイクロソフト社の言うとおりにWindowsを使い続けてさえいればバージョンアップしても概ね大丈夫だというのは非常に安心です。短所は、やはりテクノロジーベンダーのイノベーション速度や企業方針に依存してしまうということです。保守料の値上げやクラウドコンピューティングへの未対応などベンダーの方針とユーザーの利点が必ずしも一致しない場合はユーザーにとっての不利益になります。

テクノロジーロックインであってもコーポレイトロックインであってもベンダーロックインになると、製品やサービス、システム等を調達する際の選択肢が狭められ、もしベンダーによる提供価格の引き上げが起きたとしてもユーザーは従わざるを得ないため、調達コストが増大する場合が多くなります。
それより何もシステムを統治することができないことが一番の問題です。

次回は「なぜ、ベンダーロックインは起きてしまうのか?」について書いてみます。

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