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地域を視る「虫の眼」、「鳥の眼」、「魚の眼」①「改革」が時に陥る「錯覚」と「自惚れ」

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
淑徳大学コミュニティ政策学部准教授 矢尾板俊平

みなさん、こんにちは。今回からコラムを書かせていただく矢尾板俊平です。このコラムでは、地域づくりの話題、行財政改革をはじめ、自治体の施策に関わる話題、政策評価に関わる話題、はたまた選挙に関わる話題などをランダムに取り上げていきたいと思っています。時には、脱線するかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。

政策を視る「3つの眼」

さて、タイトルは「地域を視る「虫の眼」、「鳥の眼」、「魚の眼」」といたしました。「鳥の眼」という言葉。小池百合子東京都知事が本年の年頭挨拶で述べられた単語で、少し話題になりました。小池都知事は、きっと「酉年」にちなんで「鳥の眼」という言葉を使ったのでしょう。でも、政策を考えるときには、「鳥の眼」だけでは、実は、問題の本質が見えないということが多々あります。重要なのは、「鳥の眼」だけではなく、「虫の眼」や「魚の眼」という3つの視点で見ることです。

「鳥の眼」というのは、小池都知事が言われたように、「全体を俯瞰して見る」ということです。ただ「森を見て木を見ず」ではないのですが、全体を俯瞰して見るだけではなく、個別の事象をしっかりと見ていく「虫の眼」も重要です。
全体を俯瞰して見ているだけではわからないことも、「虫の眼」で見ると、新しい事実が見えてくるかもしれません。その逆もあります。経済学には「合成の誤謬」という言葉があります。これは個別で見れば「正しいこと」であっても、正しい個別のことを合わせてみると、実は間違っているということがあります。
例えば、皆さんの職場や部門単位では、とても素晴らしいことをやっている。しかし、全ての職場や部門を合わせてみてみると、予算を使い過ぎてしまって、かえって悪い状態になっている、ということがあるかもしれません。だからこそ、「虫の眼」と「鳥の眼」の両方が必要なのです。

そして、もうひとつが「魚の眼」です。これは世の中の「趨勢」なり、「傾向」なりを捉える眼であると言っても良いと思います。つまり「流れを読む」ということです。政策を考えるにも「流れを読むこと」が重要です。
いま、日本は人口減少、少子化、高齢化、そしてグローバル化といった環境変化に直面しています。こうした環境変化をしっかりと読み込んで、それに対応していかなければなりません。企業だけではなく、自治体においても、「変化に対応していく力」が求められる時代です。

こうした「虫の眼」、「鳥の眼」、「魚の眼」の解像度を上げていくためには、性能の良いデータシステムは不可欠だと思います。データシステムを活用し、データを収集し、分析し、課題を発見し、その課題に対応する解決策を実施していく。まさしく性能の良いデータシステムは、性能の良い「眼」になってくれると思います。

改革者が陥る「錯覚」と「自惚れ」

いま、様々な地域の自治体が経営改善や改革に取り組まれておられると思います。改革に取り組む改革者は、その成果は、住民の皆さんに、積極的に訴えたいものです。でも、ちょっと待ってください。その成果は、本当に成果と言えるのですか、という疑問を感じることがたまにあります。例えば、「市民の皆さんの声を聴くために、年間計〇回の対話集会を行ってきました!それが私の成果です!」という人がいたとします。

政策は、インプット、アウトプット、アウトカム、インパクトの4つの段階の「指標」で評価することが可能です。インプットとは、どれだけその政策に資源(ヒト、カネ、モノ、ジカン等)を投入したかという指標です。
何か資源を投入すれば、当然、何らかの結果(アウトプット)が出てきます。上記の例で言えば、「〇回の対話集会を開催した」ということでしょう。しかし、重要なことは、「〇回の対話集会を開催」することが重要なのではなく、その対話集会の「成果」として、「何ができたのか」、「何ができるようになったのか」、それによって「何を得ることができたのか」ということを確認することが重要です。

対話集会を開催しながら、住民の皆さんの意見を聴くことによって、具体的な取り組みが始めることができた。それによって住民の皆さんがより多くの「喜び」や「幸せ」を感じられるようになった、満足度が高くなった、ということが「成果」なのだと思います。そして、その成果が、その地域全体にどのような影響を及ぼしたのか、ということがインパクトということになります。

公共施設もそうです。公共施設を作りました、改修しました、ということは単に結果でしかありません。公共施設を作ったこと、改修したことにより、そこに関わる方々にどのような変化を生み出したのか、として、その変化を通じて、その地域全体にどのような影響を与えたのかということをしっかりと見ていかなければなりません。

「〇回の対話集会を開催した」、「公共施設を〇箇所建設した」ということは、結果であり成果ではないのですが、単なる結果を成果だと言う人が少なからずいるのが事実です。しかし、成果を検証していないので、その後、様々な問題も発生してきます。実際には、住民の皆さんの負担が増えているだけかもしれないのです。これは自惚れでしかないと思います。こうした「自惚れ」から生まれる錯覚をコントロールしていくためには、行政評価のシステムをしっかりと構築していくことが必要だと思います。

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矢尾板俊平(やおいたしゅんぺい)

1979年生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。
三重中京大学現代法経学部専任講師を経て、現在、淑徳大学コミュニティ政策学部准教授、コミュニティ政策学科長。今春に、『地方創生の総合政策論(仮)』という書籍を発刊予定。地域づくりや行財政改革等に関わるご相談、承ります。

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