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公共政策&行政改革コラム⑤「市民が自立した『まちづくり』のすすめ(前編)~行政と地域がともに汗を流すシステムの形成~」

ジャパンシステム株式会社 公共政策・行政改革ディレクター 山中 光茂

私が松阪市の市長に就任してから、「まちづくり協議会」という地域マネジメントシステムを市内全域に創ろうとしました。
「まちづくり協議会」っていうと、小難しく聞こえるかもしれませんが、 簡単にいえば自治体のそれぞれの地域のことを住民がみんなで考える「地域の経営推進会議」です。

日本は、世界では珍しい「自治会」という組織が全国のほとんどの地域に存在して、住民生活にしっかりと根付いています。全国のどこの自治体においても、「自治会」という行政主体ではなく、住民自らがお金を出しあって自分たちの地域のことを自分たちで考えていこう、行動していこうという主体がすでに存在しているのです。
最初は、地域づくりを担当している職員からも地域の住民からも、「自治会があるからそれでいいじゃない」「そんなめんどうくさい組織をわざわざ創る必要がない」と言われ、議員からも「絶対に必要がない」「全域に創れるはずがない」と言われ続けていました。

田舎にいくと、自治会長は「ひとつの権力」のようなものになっており、逆に都市部や団地エリアでは「めんどうくさい役回り」とされています。どちらにしても、各地域で重要な「役割と責任」を負わされるからこそ、「権力」ともなり、「めんどうくさいもの」ともなっているのです。 

すでにそのような「地域権力」が存在しているのに、それではなぜ「まちづくり協議会」という新たな「地域権力」が必要なのかということです。
本来「まちづくり」「地域づくり」が自治体の役員の方々だけが「業務」として行うだけのものではなく、また、行政からの「下請け」のような仕事をさせられるものではないということです。

「まちづくり」とか「地域づくり」とか言葉でいうと、なんとなくよくわかったような気になり、誰でも関われるような柔らかい響きがあります。ただ、その「まちづくりの現実」や「地域づくりの現場」という視点を極めて具体的に考えれば考えるほど、あまりにも「多様」であり、「複雑」であり、その中身をひとことで言葉に表せたり、成果を評価したりできるものではありません。

「まちづくり」は、形式的に分類すれば①行政がやるべきこと②行政と地域(地域住民)が一緒になってやるべきこと③地域が行政に頼らず自分たちの力でやるべきこと、ということになります。もちろん、もっと細かく話をすれば、民間事業者の「まちづくり」への関わりなどもあります。とにかく、「まちづくり」は行政だけがおこなうものでもなければ、地域だけで頑張るというものでもないということです。まあ、ここに書いたことは当たり前すぎるぐらい当たり前のことなのですが、、、あくまで頭の整理として書かせていただきます。

「まちづくり協議会」とは、「地域住民が自分たちの思いに基づいて、自分たちで創るもの」というのが基本です。ただ、全国でこの「まちづくり協議会」なるものが創られるときには、一方では行政がかなり強制的に各分野の代表者を集めて「かたちとして創らせる」ケースと、逆に自主的に創られた協議会にお金だけだして「あとはほったらかし」という地域の自由裁量に任せすぎるケースに分かれます。

どちらのケースも「行政」も「地域」も汗を流さずに、責任も中途半端になり、「かたちだけまちづくり」をしているかのように装っているのです。

松阪市では、「まちづくり協議会」の主体は明確に地域であるとしながら、住民が汗を流すのと同様に「創るプロセス」において行政もともに汗を流す姿勢を示し、行動を始めました。そして、「創った後の住民協議会の明確なメリット」を行政システムとして形成をすることで、自発的な「まちづくり協議会」の形成を強く促しました。

「自治会」という既存の固定化された従来の権力組織だけではなく、老人会やPTA、健康づくり団体、商工会、消防団、女性グループなど様々な地域団体への呼びかけからスタートして、「まちづくり協議会」とはなんぞやという勉強会を毎晩のように各地域で行いました。私も担当職員も43の小学校区を中心とした地域に毎晩のように伺い、住民の方々と対話を繰り返し重ねるなかで、みんなで「地域づくり」をしようという思いを醸成していきました。
それとともに、行政としても「まちづくり協議会」という組織を前提とした行政システムに切り替えるために、すべての部局の行政職員に「これからの地域づくり」についての研修を何度も行うとともに、各分野別の行政政策と「まちづくり協議会」との関わりについても中長期の計画策定において明確に記していくようにしました。

地域住民の皆さんも仕事や家庭をもっているなか、行政から「まちづくりのため、新たな組織を創ってよ」とか「それが行財政改革につながるから」といわれても、なかなかすぐに動くことができないのは当然です。全国の自治体もそのジレンマに陥っているとよく相談を受けます。
だからこそ、市長をはじめ行政も真剣に地域に向き合うんだ、一緒に汗を流すんだという「覚悟」をしっかりと示すことが大切だったのです。すべての行政職員に対し、ボランティアでの「地域づくり応援隊」を募集して地域と一緒に汗を流すことを呼びかけながら、一方的に行政から「まちづくり協議会」を創るのではなく、地域の意識の少しずつの変化を生み出しながら「まちづくり」を進めていくことにしました。私が市長に就任してすぐに「まちづくり協議会」の設立の呼びかけを行いましたが、そこから地域での懇談会をスタートさせてから全地域に広げるまでは約3年近くの長いプロセスがかかりました。

このコラムの後編においては、そのプロセスにおいて創った「行政システム」の具体例について書かせていただこうと思います。「まちづくり協議会」を先進的に創っていただいた地域に対するメリットの供与や住民がモチベーションを持って活動できる仕組みづくり、について「松阪モデル」として行った事例紹介を行いたいと思っています。乞うご期待!!

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