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都市計画と公共施設マネジメントコラム②「立地適正化計画策定の現場の悩み」

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
首都大学東京助教 讃岐 亮

昨年度、都市計画を専門とする3大学の研究者と学生が集い、立地適正化計画の策定段階にあった複数の自治体を訪問し、計画の狙い、体制、苦労話などをヒアリングした。今回のコラムでは、「現実的、現場に即した検討が可能な」立地適正化計画の策定に取り組む担当部署、担当職員の悩みなど、ヒアリングから得た計画の課題に触れることにしたい。

「立地適正化計画」という名称、今一度それを見てみると、何とも不思議である。国交省資料によると、英語では「Location Normalization Plan」と呼ばれる※。適正、Normalization、これはどういう意味であろうか。

公共施設マネジメントにおいても、公共施設の適正配置、とか、総量適正化、といった言葉がしばしば謳われるが、「適正」という言葉を正しく解釈することは難しい。実際問題として、立地適正化計画策定を指示する国土交通省も、指導される地方自治体も、策定業務を受託するコンサルタント・シンクタンクも、現状や未来予測を評価するための複数のツールは持ち合わせていたとしても、「適正」のための特定の解法を持っているわけではない。このことが、現場職員を悩ませている。

具体的な悩みのポイントを挙げてみよう。まず、単純に評価手法が多いことの混乱発生が挙げられる。この点については、国交省担当者は各自治体に丁寧に説明しているはずであるが、それは理解している側の言い分であり、地方自治体の職員は理解中途の段階で評価ツールの取捨選択判断を迫られるため、ではどれとどれを組み合わせて評価するのが適切な解答なのか、という迷いと格闘することになる。これによって都市計画行政に新たな展開を生むのであれば、あるいはこういった手法があるのだ!という新しい理解の獲得につながるのであれば、それはメリットである。しかし、実際にはそれぞれの自治体にそれぞれの背景や事情があり、必ずしも理想的に議論が進むわけではないため、悩みを増やすデメリットになることが多い。

次に、一つ一つの評価メニューにおいて用いられるツールの使いこなしの難しさがある。様々な評価ツールを用意してあげたとしても、自治体職員はそういった評価方法を使いこなせる技術を持ち合わせていない、または持ち合わせている職員はほんの一握りである。たとえば、GIS(Geographic Information System:地理情報システム)を用いた分析手法が様々紹介されているが、それを使える人材は限られるため、業務を外注してしまう状況が多々あるだろう。結果、現場職員の理解が深まらず、お金がかかり、知見ではなく書類だけが積み上がるという悪循環を生む。無論、全て外注してはいけないと言うわけではない。しかし、少なくとも理解はするべきで、こうした環境ではそれが追いつかない状況が生じてしまうことが多々ある。

あるいは、そもそも既存の計画、都市計画マスタープランがあるのに、また新しい計画を別個に作らなければならないのか、という疑問も生じている。これについても、国交省は計画策定の意義や既存計画との違いを説明してくれているが、策定する主体にとって、具体的に成果イメージと実効性が見えてこない限り、なかなか理解が難しい問題である。都市マスとの関連で言えば、改定、中間見直しのタイミングを直近で迎えた自治体もあれば、これからそのタイミングを迎える自治体もある。内容に鑑みれば都市マスが上位計画と位置づけられるため、理想的には都市マスの改定・見直しのタイミングの直後に立地適正化計画の策定を行うのが良いと考えられるが、一律に出された立地適正化計画の策定の号令は、必ずしもそうした実情を反映できていない嫌いもある。

そして、もっとも悩みが深いのは、どうやら「誘導施設の設定」のようであった。計画は、都市機能誘導区域内に誘導施設を誘導することを目指す。そのため、区域外の新設については、イヤミを言うなどある種の制約がかかる状態となる。実際問題として、そうした状況に追い込めるような民間施設とは何なのか、それが共通する話題であった。たとえば、医療施設は区域外新設にイヤミを言えるだろうか? 福祉施設は? 子育て関連施設? 既に策定を終えた自治体の計画に、苦肉の策が掲載されているので、このコラムでも次回以降で話題にしたいと思う。

さて、ここまで書いてきた事柄は、全く同じことが公共施設マネジメントに取り組む部門においても当てはまるのではないだろうか。公共施設白書、公共施設等総合管理計画、長寿命化計画、等々。策定の現場を時に第三者目線で眺め、特に支援し、時に批判してきた立場からすると、指導者が国交省か総務省かの違い、策定に関わる部門の違いがある程度で、目の当たりにする課題は同じだと考えている。

同じ悩みを抱える者同士は、共通の愚痴をこぼし、困難突破のノウハウを共有し、結果仲間になるものである。先日訪れた全国の自治体職員が集まる研修会では、夜を徹して共同作業し、互いの自治体の状況を打ち明けあい、普段の職場では話せないような意見を意気揚々と語り合っていた自治体職員の姿があった。

幸か不幸か、公共施設等総合管理計画の策定と、立地適正化計画の策定が時期的に重なっているケースを多く目にする。そうした環境は、つまり、お互いに切磋琢磨できる環境である、と言うのは言い過ぎだろうか・・・。

※参考ページ:Major Efforts Made in the Fields of National Land and Transportation

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