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業務のIT化を考えるコラム②「流れ」と「仕掛け」

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
株式会社アトリス アーキテクチャー開発執行役員 長嶺 亮

前回は、業務が業務として継続的に流れるようにする為に、業務を「流す」ための「仕掛け」が必要ではないか、という考えを提示してみました。では、「仕掛け」と「流れ」、これらを、どのように理解すれば良いでしょうか?

今回はこの両者の位置づけについて整理してみようと思います。

運転者の視点と、地理的な(地図の)視点

「仕掛け」と「流れ」の違いをイメージする為に、組織の「業務」の話から一旦離れて、自動車を「運転」することについて考えてみましょう。

私達は何故、自動車を運転することができるのでしょうか?

運転技能を持つ「人」がいて、「自動車」があって、「燃料」があれば、それで運転はできるでしょうか?

それらももちろん必要ですが、それだけだと、エンジンを掛けることは出来ても、運転までは出来ません。

運転を可能にするためには、「場所」が必要です。そして、それらを結ぶ「経路」(道路)も必要です。先に挙げた3つの要素が存在する前に「場所」(現在地、目的地や到着地など)とそれらを結ぶ経路が存在しなければ、そもそも「移動」(という概念)自体は発生し得ず、すなわち移動手段としての「運転」をすることもあり得ません。出来る、出来ない、の問題ではなく、そもそもあり得ないのです。

「場所」および「経路」という「仕掛け」があるからこそ、その上に「運転」(して移動する)という「動き」(「流れ」)が現れます。

では次に、行先の「場所」が異なると、その時の「運転」の仕方はどうなるでしょうか?

出発地や到着先が異なると、方向や距離が異なるので、それに応じて、ハンドルやブレーキの操作タイミングや操作の回数等が変わってきます。また、目指す行先が同一の「場所」でも、その時々の道路の状況、例えば混雑しているか、否か、時間帯が日中か夜間か、あるいは、天気の状態等、直面する様々な状況に応じて、「運転」の仕方は変わります。状況に応じて動的に変わります。

一方「場所」やそれらを結ぶ「経路」の「存在」は運転者が直面する様々な条件とは関係なく不変です。静的です。もちろん、どこかに新たに遊園地が開拓されたり、新しく道路が開通したり、ということはありますが、これら存在の変化は運転者視点(短期的視点)から見れば、静的と言えます。(新たな場所や、経路が存在するようになったから、そこまで運転していくことが出来るようになります。)

話を「仕掛け」と「流れ」に戻します。ここで取り上げた運転の例では、「仕掛け」は、場所および、これら異なる場所間の経路の「存在」に該当し、「流れ」は運転して「移動する」ことに該当します。

自動車の運転における「仕掛け」と「流れ」の違いを、また別の観点から見てみましょう。

「仕掛け」を表現するものとして、「地図」があります。「地図」では「場所」について、各地点間の関係を「方角」や、「距離」の関係を図に表しています。

一方、「流れ」(流れた結果)を表現するものとしては、ドライブレコーダー(一般的な車には装着していませんが)で記録される「運転記録」があります。「運転記録」では、どれくらいの「時間」、どれくらいの「速度」で走行し、ハンドルをどれくらい「回したか(これは方角ではなく、右回り、左回りを表します)」等の情報を扱います。これらの情報から「停止状態」や「加減速の状態」や「走行距離」等を割り出す事ができます。

地図と、運転記録は、本質的に異なります。それぞれが扱っている次元が異なります。故にそれらを表現する際に扱う「対象」、「方法」、「用途」が異なります。

どこかへ運転して出かけた時に、立ち寄った「場所」を確認したい人は、運転記録を見るのではなく、地図を見るでしょうし、エコな「運転」ができたかを確認したい人は、地図を見るのではなく、運転記録を見るでしょう。

「流れ」(運転記録)から「仕掛け」(地図)を作れるか?

もう少し、この2つの次元について考えてみましょう。「流れ」を詳細に分析することで「仕掛け」を再現することはできるでしょうか?

複数の運転記録を机上に並べて見た所、その中身が異なっていても、よく調べたら、出発地や到着地の「場所」が同じだったと言う事が起こり得るでしょうし、あるいは逆に、複数の運転記録の中身が非常に似ていたけど、よく調べたら、出発地と到着地の関係性、例えば、方向や距離(分岐点までの距離も含めて)が同じ(互いの位置関係が相似)なだけで、実は出発地も到着地も全く異なる場所だったと言う事もあり得るでしょう。

もし、運転記録をよく調べずに地図を作成したなら、本来は1つの場所なのに、それが複数出てきたり、本来存在するはずの場所が存在しないことになったりと、実態を表さない奇妙な地図になるかもしれません。

「流れ」から「仕掛け」を作る事は非合理的であり、作れたとしてもその整合性を検証することは不可能かもしれません。当然の事ながら逆に、地図を一生懸命眺めてみても、地図から運転記録が浮かび上がることもあり得ません。

両者は異なる次元のものであり、片方からもう一方が生まれることはあり得ません。

「仕掛け」と「流れ」はそれぞれの延長線上にどちらかが存在するものではなく、次元が全く異なる独立した別物として捉える必要があります。

しかし、両方の次元で共に扱う何らかの共通要素があれば、それらの粒度を揃えた上で、双方を重ね合わせることは可能であり、そうする事で有効な情報を新たに得る事ができます。例えば、カーナビは、人工衛星から自動車の位置を特定し、その位置情報の履歴を運転記録(「流れ」の記録)として保持し、距離という共通要素で粒度を揃えて地図上(「仕掛け」)に重ねることにより、より有効な情報を得られるようになります。なお、「地図」をベースとしてその上に「運転記録」を重ねるように、「流れ」は「仕掛け」に従属する関係であることに注意をする必要があります。

このことは組織における「業務」についても同じ事が言えます。「業務フロー」は「流れ」を可視化しているものであり、この延長上に業務の「仕掛け」は見えてきません。

業務の「仕掛け」を可視化する作業は、システム化プロジェクトにおける基礎工事です。異なるバックグラウンドを持つプロジェクトメンバーが一同に会し議論する際、それぞれが語っていたり、イメージしたりしている粒度が揃っているとは限りません。そのためにも、「流れ」の議論に入る前にまず、この基礎工事を行うことが大切になります。

この作業を通じて可視化される「仕掛け」に登場する要素は、その組織が業務を「流す」為に必要な管理対象の「存在」とそれらの「関係性」であり、それは組織が業務の「何を管理したいのか」とイコールです。

業務の管理対象を明確にしてこそ、その業務を遂行する際の「流れ」について、粒度を揃えた議論をする事が始めてできるようになります。

今回は「流れ」と「仕掛け」の違いを通じて、「仕掛け」は「流れ」から導き出せるものではなく、「仕掛け」は「仕掛け」として可視化する必要性について述べましたが、組織の業務における「仕掛け」として抑えるべき対象が何なのかについての説明はまだしていません。次回は組織に置ける業務を定義する事を通じて、業務の「仕掛け」として何を抑えるべきか見ていこうと思います。

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