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IoT時代のセキュリティ④ ドローンのセキュリティとセーフティ~中編

こんにちは。
鈴木盛正です。

今回は前回に引き続き、ドローンのお話です。
ドローンのみならず、セキュリティを考察する上で、「何から、何を、防御するのか?」を考えることが非常に重要です。今回は、まず「何から何を?」を明確にするため、ドローンがどのように使われているのか、そしてそれに付随したエコシステムが何から構成されているのかを考察します。


ということで、前回に続き、第二象限のお話となります。
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飛行許可・承認に見るドローンの使われ方

前回、改正航空法について触れましたが、許可・承認の所轄官庁である国土交通省航空局のホームページにその統計が公開されていますので、グラフ化してみました。(注❶)
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国土交通省航空局への項目別許可承認件数の推移
青棒グラフは、2015年12月の改正航空法施行から2016年5月9日までの許可・承認件数を表す。
赤棒グラフは、2016年5月10日から2016年12月9日までの許可・承認件数を表す。
緑線グラフは、増加率(右軸)を表す

上記グラフから見て取れるように、直近6ヶ月の申請数が激増しています。特に、催事場上空、夜間飛行、目視外飛行、危険物空輸、物件投下などの申請数が大きく伸びています。飛行の目的としては、脚注※1の資料中にあるように、全体の40%が空撮、ついで測量:8%、インフラ点検:7%、災害対応:7%となっています

この申請数の激増と大きく係わっていると考えられるのが、以下のような政策的後押しです。

• 内閣府 国家戦略特区(注❷)
• 秋田県仙北市、茨城県つくば市、広島県、徳島県、高知県などが近未来実証特区に認定されドローン関連の実証実験を開始
• 国土交通省 i-Construction(ICT土木)(注❸)
• トンネル・橋梁などの社会インフラ・メンテナンスにおける点検や測量にドローンを活用
• 農林水産省 空中散布等における無人航空機利用技術指導(注❹)
• ドローンと呼ばれる前から農業用無人機による農薬散布などに関する基準の策定
• 地方創生及びインバウンド戦略の一環としての観光促進
• ドローンによる空撮映像をYouTube等で公開

マーケット分析レポートでも確実に伸びているドローンビジネス

政策的後押しもあり、今ドローン業界は大変活況を呈しています。ドローン産業関係者の間では、ドローンが怪しいホビーから使えるツールとして地歩の固まった昨年をドローン元年、そして2017年の今年は、ドローンがビジネスとして成立し始めたとして、ドローンビジネス元年と言われています。

その市場規模は、2016年度 国内市場規模 353億円(注❺)とされ、2015年度の175億円から、実に2倍に増えています。また、2016年度の353億円という実績についても、昨年3月頃の予想では200億円とされていましたので、大きく上ブレしています。日本のドローン市場が、確実に成長軌道に乗ったことが押し測れます。

また、ドローン市場における売り上げを見てみると、機体そのものよりも、サービスと、周辺サービスが大きく伸びると予想されています。では、この「サービス」とは、具体的に何なのかについて、次に見ていきます。

ドローンと関連産業の俯瞰図

ドローンの機体のみならず、それを利用したサービスや、ドローンを支える周辺サービスも含めたドローン産業全体のエコシステムを1枚にまとめてみました。
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I. 用途

I-1.平常時の用途
ここで言う「平常時」とは、通信が確保された環境下で利用することを表します。「ブラタモリのあれ」で有名な空撮から、千葉市で実証実験が始まった空輸、高圧鉄塔や橋梁などのインフラ点検や測量、農薬散布や生育状況確認など農業(AgTech)、防犯・警備、スタジアムのスポーツ中継等の商業用途の他、ドローンレースといった競技用途まで、既に様々な用途で利用されています。

I-2.災害時の用途
海、山における遭難者の捜索、避難所への物資の空輸、水害や火山災害時の災害規模把握や二次災害防止のための継続的観察といった用途で利用されています。大規模災害時には、通信インフラの復旧に時間を要し、それがネックとなって適切な救援活動が取れないことが問題となっています。この課題を解決するために、複数のドローンにより通信カスケードを行う、ドローン基地局(注❻)という構想があり、既に海外では実用化されています。国内においても、昨年迄の情報通信研究機構(NICT)と産業技術総合研究所(AIST)による研究開発段階から、今年はついに通信キャリアによる実証実験が開始されます。

II. 周辺サービス

II-1.トレーニング&ライセンス教習
現在、活況を呈し始めているのがこのサービスです。車の免許と異なり、ドローンの操縦ライセンスは国家資格ではなく、また操縦するのに必須の資格でもありません。しかし、ビジネス現場や、前回述べた国土交通省の事前承認が必要な飛行方法を行う場合においては、なんらかの操縦ライセンスを求められるケースが殆どです。 国内では、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、日本UAV利用促進協議会(JUAVAC)、ドローン操縦士協会(DPA)といった一般社団法人の他、機体購入時に付属するドローンメーカーによる講習など、ドローンを安全に飛ばすための操縦者ライセンス教習が、既に幅広く提供されています。
農業用途で農薬などの空中散布を行う場合は、一般社団法人 農林水産航空協会(農水協)が認定した機体であることと、操縦者は同協会が認定した資格を有することが求められます。

II-2.飛行申請・許可代行
• 教習から飛行申請、運用、保守までをトータルで支援するサービスは、これまでドローンメーカーとその代理店、元ラジコン・ショップから提供されていましたが、最近では、NECフィールディングや日立システムズと言った、大手ICTベンダーも参入し始めています。

II-3.保険
ドローンが墜落した場合などに対物・対人への補償を行うドローン保険が、日本の大手損保各社から販売されています。脚注1に示した国土交通省航空局の統計を見ても、申請された飛行の95.7%は保険に加入済(注❶)であり、商業用途の飛行では、保険に入るのが当たり前の時代になっています。

II-4.ドローンポート、テスト&デモ飛行場
既に国内でも、数十か所のドローン専用飛行場(ドローンポート)(注❼)が開設されています。その殆どは練習・教習や、テストフライト用ですが、ドローン空輸専用のドローンポートの実証実験が開始されました。

II-5.組立・整備
•現在のドローンは、概ね数キログラム以下の小型機は完成品で販売されていますが、それを超える中・大型機については、ユーザによるカスタマイズを前提としたキット形態、もしくは注文生産による販売となっています。これら中・大型機については、組立精度や選択するパーツにより飛行性能が大きく変わるため、専門の知識・工具が必要であり、その技量を有するメーカーとその販売代理店、専門ショップがサービスを提供しています。この辺は、自作PCやロードバイク(自転車)の世界に似ています。

III. 関連法規とガイドライン

前回述べた航空法の他、ドローンの遠隔操縦や観測データの送受信には、電波法に従った通信方式を使用する必要があり、一部の周波数帯では無線局の免許が必要です。(注❽)民間航空機の場合、耐空証明や、耐空証明のうち、設計が適正であることをその型(機種)全体に適用するための型式証明を取得しないと、その国の上空を飛行することが出来ません。開発中の国産民間旅客機 三菱MRJが、機体はできたのに販売開始が2年以上も先なのは、最大マーケットであり、それゆえ世界一厳しいとされるFAA(アメリカ連邦航空局)の型式証明を取得する試験に時間がかかるためです。

無人航空機では、民間航空機並みの耐空証明は求められず、またそこまで厳しい制度もまだありません。しかし、第3回で述べたように、重量(最大離陸重量)25キログラム以上のドローンについては、機体の堅牢性や動力装置の冗長性など、一定の基準を満たすことが求められます。今後ドローンが増え、利用するのが一般的になった将来においては、なんらかの耐空証明が求められるのではないでしょうか。(無人でない)航空機の場合、管制空域内を飛行することが義務付けられています。現状、無人航空機に関してはそのような決まりがなく、現に民間旅客機とドローンとの衝突事故や危険な接近といったインシデントが発生しています。(注❾)このような事故を防止するため、NASAを中心に、UTM(Unmanned aerial system Traffic Management)の研究開発が進められています。日本では、JAXAが中心となっています。

IV. ソリューション/サービス/クラウド

現在のドローンにクラウドは欠かせないものとなっています。その理由は、ITと同じように、必要な時に必要なだけコンピューティング・パワーを使える、既にあるクラウド上の様々なアプリを流用できる、といった理由もありますが、無駄に重いコンピュータを搭載して重量を重くしたくない、というドローン特有の事情もあります。

ドローンに搭載されたカメラやセンサーの情報は、クラウドにアップロードされ、そこで様々な解析を行い、その結果がソリューションやサービスとして提供されます。また、センサーやカメラの映像は、GISマッピングされ、「どこで、どのようなことが起きているのか?」という結果となって出力されます。例えば、カメラやセンサーの情報から植物の生育状況を俯瞰的に捉え、その結果をセンサーにフィードバックすることにより、時々の農作物の生育状況に応じた最適な水や肥料の配布が可能になります。さらにその生育結果をDeep Learningすることにより、生育ロジックをより最適なものに逐次更新する、といったことが可能になっていくでしょう。

ドローンの4つのキモ

ここまで述べてきたように、ドローン産業は非常に広がりを持つ産業であり、正に今、複合システム:System of Systemsが構築されようとしています。

では、複合システムの核となるドローンの“Systems”とは何でしょうか?
それが以下の4つです。

• コンパニオン・コンピュータ
• ペイロード・ユニット・コンピュータ
• グランド・コンピュータ
• クラウド

クラウドについては、既に述べました。
残りの3つが、ドローンのセキュリティとセーフティに深く関わって来ます。

ということで、次回はこの3つのコンピュータを中心に、ドローンのセキュリティとセーフティについて考察します。

筆者プロフィール
鈴木 盛正(すずき もりまさ)
1987年日本ディジタル・イクイップメント(日本DEC)からITキャリアをスタート。
一貫してITインフラストラクチャの設計・構築・運用のプロジェクトマネージャ、コンサルタントを務める。
現在、当社にて近未来新規ソリューションの開発を担当。

注❶)国土交通省航空局の下記統計資料から、筆者にてグラフ化。

 改正航空法の運用状況について(平成28年5月30日)PDF
 改正航空法の制度と現状等(平成29年1月16日)PDF

具体的な申請内容(許可・承認内容と申請市区町村、機種)についても下記に公開されています。
 無人航空機に係る許可承認の内容 平成28年度 【本省航空局担当関係】(平成28年5月9日)PDF

注❷)内閣府 地方創生推進室
 「近未来技術実証特区」における自動飛行プロジェクトについて(平成27年7月19日)PDF

注❸)国土交通省 i-Construction(ICT土木)
 iConstructionホームページ別ウィンドウで開きます。
 iConstruction の取組状況 (ICT 土工事例集)ver.2(平成29年3月31日)PDF

注❹)農林水産省
 無人航空機(無人ヘリコプター等)に関する情報PDF

注❺)インプレス総研 
 2016年度の国内のドローンビジネス市場規模353億円(前年度比102%増)
(2017年3月22日)

注❻)KDDI株式会社
 「ドローン基地局」の開発について(2017年2月24日)

注❼)国土交通省
 物流用ドローンポートシステムの検証実験

注❽)総務省
 電波政策2020懇談会 報告書(平成28年7月)PDF

注❾)GIGAZINE
 ついにドローンが旅客機と衝突する事故が発生
 注❶「無人航空機に係る許可承認の内容 平成28年度 【本省航空局担当関係】(平成28年5月9日)」にも、国内におけるドローンと有人航空機が異常接近したインシデントが報告されている。

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