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IoT時代のセキュリティ③ ドローンのセキュリティとセーフティ~前編

こんにちは。
鈴木盛正です。

東京では、今年、花散らしの雨に祟られ、観桜も満足に出来なかったか方も多いかと思いますが、それを補ってくれるのが「ドローンによる空撮」ではないでしょうか。(注❶)

ということで、ややこじつけ気味ではありますが、今回はドローンをお題に、第二象限のトピックとなります。まだまだ勃興期の産業であるため、議論の土台として、「そもそもドローンとは何ぞや?」という、少々迂遠な話から始まりますが、気楽な気持ちでお楽しみ頂ければ幸いです。

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ドローンとラジコンの違い

ドローンと聞くと、皆さん、どのようなイメージが浮かぶでしょうか?

「NHKブラタモリの冒頭映像を撮っているアレ」
「首相官邸に墜落した、ビーンって飛んでくる迷惑物体」
「近い将来、Amazonに注文した品を自宅まで宅配してくれるかもしれない愛いやつ」

これはこれで全て事実なのですが、もう少し定義を明確にしたいと思います。

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ドローンは、UAV:Unmanned Aerial Vehicles(直訳すれば『空飛ぶ無人機』)の通称です。上図のように、陸海空それぞれに無人機があり、それぞれUAV、UGV、UMVと呼ばれ、全体をUxVと称することもあります。ドローン(UAV)自体、最も進んでいるのは軍用ですが、その世界では、ドローンとその周辺システムを含めて、UAS:Unmanned Aircraft Systemsとも呼称しています。(注❷)本コラムでは、UAV=ドローン、として話を進めます。

上図をご覧になって、「なんだ、ラジコンじゃん!」と思われた方、当たらずしも遠からず、です。

ラジコンとドローン(及びその他のUxV)の一番の違いは、「常に操縦者を必要とするか、否か」です。現在のドローンは、GPSや慣性航法装置によって、自律飛行が可能です。自律飛行により操縦者が機体を肉眼で目視できない遠くを飛行することを、目視外飛行、あるいは有視界外飛行と言い、専門用語でBVLOS:Beyond-Visual- Line-Of-Sightと言います。このBVLOSを出来るか否かが、ドローンとラジコンを分ける重要な違いです。

紛らわしいのは、世間一般でドローンと呼ばれる機体の全てが、自律飛行機能を持っているわけではないことです。2015年4月に発生した、首相官邸へのテロ事件に使用された機体は、見た目も製造メーカもドローンそのものですが、自律飛行機能を持たない機種なので、正確には“ラジコン”に分類されます。

但し、自律飛行が可能な機体であっても、現実に、離陸-飛行-着陸まで全てを全自動計器飛行(オートパイロット)で飛ばしているかと言うと、「無理すれば出来ないことはないが、普通はやらない」というのが現状です。

オートパイロットのみで飛ばさない第一の理由は、まだ求める精度に達していないからです。例えば現在のドローンの多くは、GPSや画像センサ(カメラ)を備えていて、地表にある特定の目印に向かって自動で着陸する機能を備えています。しかし、機器自体の精度や風の影響などにより、目標地点から10~20メートルほどずれてしまうことがままあります。

改正航空法による制約

第二の理由は、改正航空法の関連です。
平成27年(2015年)12月に施行された改正航空法において、特にドローンを対象とする法的規制が強化されました。(この契機となったのが、前述の首相官邸に対するドローンによるテロ事件)この改正により、ドローンは無人航空機と呼ばれ、更に機体重量によって2つに分類されました。(注❸)

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改正航空法では、最大離陸重量が200グラム以上の無人機を無人航空機、200グラム未満の無人機を模型航空機、としています。ここで言う無人航空機とは、『構造上、人が乗ることができない機器であって、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの』とあり、動力(ゴム、エンジン、モーターなど)や、遠隔操縦手段(無線:ラジコン、有線:Uコンなど)に関係なく適用されます。加えて、最大離陸重量25キログラム以上の無人航空機には、ある程度の機体の堅牢性や動力の冗長性が求められます。(注❹)また、今回の改正では、許可が必要な飛行空域として人口密集地:DID(Densely Inhabited District)が明確に追加されると共に、事前承認を必要とする飛行方法が新たに定義されました。(注❺)

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新たに定義された飛行方法の制限により、BVLOS(目視外飛行)や夜間飛行、物件投下などを伴う飛行の場合は、無条件で事前申請と承認が必要になりました。(注❻)また、飛行方法の制約に抵触する場合は、25kg未満の無人航空機であってもプロペラガードの装着など機体側の対応や、操縦者にその飛行の経験があることなどが承認の条件となる場合もあります。その一方で、申請者の利便性を図るため、飛行内容が変わらない場合、1年を限度とした、包括申請・承認が可能となっています。

逆に言うと、事前の申請も許可も必要のない飛行と言うのは、『日中、空港から離れた、人気のない、見通しのよい場所で、操縦者が常に目視できる範囲を、高度150メートル未満で、危険物を積まず、モノを投下することもなく、飛行する』という飛行に限定されることになりました。

ドローンのキーファクタ:ペイロード比と人の立ち入りが困難な場所への到達

「ということは、結局ホビーで終わるんじゃないの?」と思われたかもしれません。

しかし、ドローンには、ホビー用途で終わらせるにはもったいない、機能的に秀でた点が二つあります。それが、良好なペイロード比、と、人の立ち入りが困難な場所への到達、です。まずペイロード比ですが、これを簡単に言うと、「機体総重量と、運べる積載物重量の比」です。正しい計算はかなり複雑なので、ここでは以下の式で極々簡易的に算出しています。

貨客重量÷機体本体の重量(燃料・バッテリー込)

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各種運搬手段のペイロード比と航続距離(距離は、1回の給油・充電で動ける距離を表す)

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各種運搬手段のペイロード比とペイロード重量

ここ1,2年に発売されたドローンは、機体重量の半分から2倍程度のモノを運搬する能力があり、概ね数kmから20km程度の航続距離があります。飛行時間にすると、大体10分~30分、飛行速度は時速30km~最大60km、という感じです。

この図にあるように、他の運搬手段と比較すると、重いモノを遠くに運ぶことは出来ないが、軽いモノを近くに運ぶには効率良い手段、であることがわかります。この特徴を生かし、昨年あたりから、モノの運搬の実証実験が始まっています。(注❼)

第二の特徴は、人間が立ち入れない/立ち入りづらい場所を観測したり、そういった場所に荷物を運んだりする能力、です。例えば、噴火や水害など、俯瞰的に全体被害を捉える必要がある場合や、海・山の遭難者にAEDや緊急援助物資を運搬する、と言った用途に向けて、実証実験が始まっています。
林業における獣害防止柵の見回りにドローンを使用し、それまで山を跨ぐ獣道を1日がかりで見回る作業を2時間程度で終えることができた、という実験(那珂町)や、徳島県では、広大な面積を有する太陽パネルの点検等において、人が見まわると丸2日かかる作業を数時間で終えることができた、といった結果が出ています。(注❽)

ということで、今回は「ドローンの定義とその能力」の説明で紙数が尽きてしまいました。次回は、このような能力のあるドローンは、「一体何に使われていて、どんなエコシステムが構築されているのか?」について、見て行きたいと思います。

筆者プロフィール
鈴木 盛正(すずき もりまさ)
1987年日本ディジタル・イクイップメント(日本DEC)からITキャリアをスタート。
一貫してITインフラストラクチャの設計・構築・運用のプロジェクトマネージャ、コンサルタントを務める。
現在、当社にて近未来新規ソリューションの開発を担当。

注❶ウェザーニュース 【ドローン空撮】まるで空中散歩…空からサクラ見物

注❷Unmanned Systems Integrated Roadmap Fy2013-2038PDF
「曖昧な事柄は原典に当たれ」ということで、少々剣呑ですが、ある意味最も進んでいる軍用無人機の現状と将来、関連するシステム、法規、問題点についてまとめられています。

注❸下記資料を参考に筆者にて補足。
首相官邸 小型無人機に関する関係府省庁連絡会議
小型無人機の更なる安全確保のための制度設計に関する分科会第2回配布資料3:リスクに応じた規制の区分の考え方について(民間側構成員資料)PDF

注❹国土交通省 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領PDF

注❺国土交通省航空局 無人航空機の飛行ルール

注❻FPV
BVLOSと似た用語に、FPV:一人称視点(First Person View)というのがあります。これは、ドローンに搭載されたカメラからの映像をリアルタイムで手元の遠隔操縦機器に映し出し、まるで自分がドローンに乗っているかのような視点を提供する機能です。しかしFPV機能を持っていても、操縦者が機体を肉眼で見ていることにはならないため、目視外飛行を行う場合は飛行申請の対象になります。

注❼千葉市 先端技術を活用したドローンによる宅配サービス・セキュリティ

注❽獣害防止柵点検に関するお話は、国際ドローン展2017の那珂町ブースにてご担当者より伺いました。ソーラーパネル点検については、下記記事を参照。日経テクノロジー・オンライン:徳島県、「ドローンと人手の差」を検証、メガソーラーの定期点検で

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