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病院の新築、移築の際に考えてほしいシステム関連のこと(1)

病院情報システム(HIS)は、一定期間ごとに計画的に更新する事が望ましいものです。

システムの更新時、漫然と同じシステムでの更新を行うのではなく、業務の効率、新たな機器への対応、病院の行っている診療との適合性などを検討し、データ移行などのことも考慮した上で、新たなシステムも含めて検討を行うことで、よりその病院にあったシステムが実現できるかと思います。

病院自体も老朽化した場合に立て替えを行ったり、もちろん新築したりすることがあります。

今回はそういう場合に気をつけておく点を述べてみたいと思います。

後で、こうしておけばよかったということにならないよう、設計時からきちんとシステムなどのことを考慮しておくことで、システムの運用の負担を軽減し、トラブルも減少させることができます。

(1)設計の早期からシステムの担当者が関与をすること。

建物の設計について、一定の形ができあがるまで、システム部門が関与していない場合がありますが、余りよい状況とはいえません。

現在の病院の状況に精通している設計業者であれば、病院における情報システムの重要性をよく認識しているはずですので、当初からの関与を求めるか、それなりの提案を行ってくると思います。そこで、システム部門としてもきちんと関与して行くことが必要です。

業者がよく知っているとしても、設計業者に任せることなく、きちんとシステム部門が関与して設計をまとめるべきだと考えます。

もちろん、後に(7)で述べる「協力体制とチーム作り」があってのことですから、それを忘れないようにして下さい。

関与の際に配慮するとよいのは、どのような課題があるか、どういう使い方をしたいかといった点をきちんと伝えるということではないかと思います

それをきちんと伝えずに、こういう場所がほしい、こういう形にしてほしい、ということだけを伝えると、その意図が理解されないまま形になることもあります。形にする事はできるだけそのプロである設計者にお願いする事が成功の秘訣です。

(2)災害発生時の対応を適切に検討すること

災害発生時の対策について、何を活かして(確保して)、何ができるようにするかを明確にして下さい。(災害発生時の計画に関しては、事業継続計画(BCP: Business continuity planning)あるいは緊急時対応計画Contingency Plan)としてまとめられている場合もあります。)

全ての要求に対応できるわけではないので、どこまでの災害であれば対応するようにするのかそれを明確にすることが重要です。

 
そこを明確にして、病院としての方針と合わせて確認をして設計に反映させれば、災害時対応もスムーズにできるかと思います。

具体的にはライフライン(特に電気、通信網など)が停止したときに、どうするかということになりますが、多くの医療機器は、情報システムそのものであり、それが稼働しなければ診療そのものができないことをきちんと認識し、その維持に何が必要かを検討、設定して対応する事が必要です。

非常用の発電機などを備えている場合は、その供給範囲、供給が維持される時間等も重要なポイントですが、意外にそれが認識されていません

多くの非常用発電機はあまり長時間の対応を想定していませんし、思ったより供給の範囲も少ないものです。また、日頃から燃料の量などを確認していないと、テスト稼働などで燃料を使ってしまい、その後補充をしておらず、十分に蓄えがなかったといった例もあります。(施設の担当に確認してみて下さい、一度非常用の発電装置を目で見て確認することも効果的です。)

地震などの災害の場合は、道路の寸断や液状化などの影響で、燃料の供給ができないことも考えられます。

十分な対応ができない場合は、電力供給が途絶えてからどの程度の時間で患者さんの移動などを行わなければならないかをきちんと決めておくなど、システム部門として災害時のアクションプランの策定をきちんと行っておくことも重要です。

また、機器の破損や故障に関してもどう対応するのか確認しておく必要があります

業者ごとの連絡先、担当者等を把握し、それらをいつも携行して、いつでも連絡がつくようにしておくことなどは基本といえます

また、局所的な災害であれば、業者の支援も比較的容易にできると思いますが、広域的な被害が発生している場合、同様の被害を被っている病院が多数あり、なかなか対応が進まないということも想定されます。

業者の対応ができない場合も考えて、その間、どのように診療を進めるかも考える必要があります。

よく、HISの更新時などに、「紙対応」を行う場合もありますが、一旦システムベースでの業務に移行すると、それも難しいものです。(特に若い世代の方々は、紙での業務経験がない場合が多い)。使用する用紙のストックや運用の仕方など、普段から訓練するなどの対応も考える必要があるかもしれません。

(3)適切な電源の確保

(2)にも関係しますが、各場所での適切な電源の確保も重要です。

これは、非常時も供給できる無瞬断の電源を、端末からサーバーまで、ネットワーク機器を含め供給できるようにする、ということです。(プリンタなど、全て稼働させなくてもよいものは、制限するなどしてもよいでしょう。)

それには、無停電電源装置(UPS (Uninterruptible Power Supply)やCVCF(Constant Voltage Constant Frequency)など)経由の非常用電源(切り替え時に瞬断の発生するもの、しないもの)、通常の電源(非常時には停止するもの)等の適切な配置、供給をきちんと設定する必要があります。

非常時のみ使用するものと考え、経費を圧縮するといった考えになる場合もありますが、それがなければ、診療そのものが成立しないという認識で対応すべき問題です。そのことを十分主張して認識してもらいましょう。

単に非常用のものだけではなく、コージェネレーションシステム(熱源より電力と熱を生産し供給するシステム)などにより、電力供給手段を複数もつことも有効な場合があります。以前行われた計画的な停電などの際に、コージェネは影響を受けず、非常に有効に機能した例もあります。

また、特に、情報システムはサーバーや端末だけでなく、ネットワークが重要です

ネットワークに関しては、端末からサーバー機器までのトータルな経路で電源を確保する必要があり、末端のHUBなどのネットワーク機器、EPS(Electric Pipe Space / Shaft、電気系配管の区画、スペース)や機器設置室などの基幹ネットワーク機器などへの供給を忘れないようにして下さい。(病棟などでの利用が多い無線LANによるHISの端末も、無線LANそのものが使えないと役に立ちません。ネットワークが稼働しない前提での危機や対応の準備も検討する必要があります)

また、情報システムの可動に関して、空調の可動を確保することも重要です。空調を停止せざるを得ない、または空調のトラブルが発生した場合に、換気を確保できるような配慮も必要です。

ところで、サーバー機器に関して、EIA規格のラックに収納し、ラックごとにUPS等を設置している例を見ることがありますが、供給される電源自体が非常用の発電機を備え、CVCF経由の無瞬断の電源である場合には、UPSの省略も検討すべき点といえます。

個別に設置されているUPSは、電源状況を監視、対応するための回路部分と、非常時に一定時間電源を供給する蓄電池(バッテリー)で構成されているものですが、この回路、蓄電池ともに意外にトラブルの原因になる場合があります。

UPSは本来可用性を向上させるものですが、2重にすることでリスクが低減されるというものでもなく、一部のリスクが増加するということも踏まえて、電源の事情によってその対応を検討すべきものと考えて下さい。トラブルの減少の他、経費の低減も見込めます。

さらに、蓄電池は、UPSの状態を監視するインジケーター等で、正常と表示されている場合でも、時間の経過により必ず劣化します。そのため、導入当初からランニングコストとして交換の時期などを確認し、そのコストなどを見込んでおく必要があります。(およその場合、本体何年、バッテリー何年と設定されているはずです)

ところで、UPSの多くは、ソフトウェアなどにより、停電すると接続されたサーバーの電源を適切な手順でシャットダウンし、自身も休止状態に入り、電源復旧すると機器を起動するという動作を行います。機器をシャットダウンさせずに継続して使いたい場合に、どのような操作をすればよいか、休止状態の時に、電源共有をしたいときはどのようにすれば良いかをあらかじめ調べておくと、非常時に慌てません。場合によっては調べて機器に貼り付けておく等すると安心です。

バッテリーについては、病棟で利用するノートパソコンについても注意する必要があります。

機器選定の際に、バッテリーの維持時間を考慮して選定する必要が有り、大容量のバッテリーなどがある場合は、そちらを選定した方が良いこともあります。

外付けのバッテリーをワゴンに搭載する場合もあるかと思いますが、本体の容量を増やした方が、場所もとりませんし、外付けバッテリーは意外に高価なので、経費的にも有利になることがあります。

さらに、バッテリー劣化時の交換費用なども後で必要となるなど、デメリットも多いので、十分検討をして下さい。

※次回PART2へ続きます

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