JAPAN SYSTEMS Driving for NEXT NEW with Comfort and Convenience

診療のマネジメントの手法(クリニカルパス)

多くの人は病気になったら診療所や病院へ行くのが普通でしょう。そこでは、医師、看護師やそのほかの医療職が協力して診療を行い病気を治してくれます。さて、その診療所や病院は慈善事業ではありませんので、当然経営のことを考える必要がありますし、経営のことばかりを考えて質の低い医療を行っていたのではこれまた困ります。

さらに、日本のように医療費が保険でまかなわれる状況では、原資が限られていることもあり保険診療でやたらと薬を出されるなどして、医療費が不要に増加していくことも抑えていく必要がありますし、きちんと根拠のある診療(いわゆるEBM(evidence-based medicine):根拠に基づく医療)を進めるという点からも、我流の医療などが行われることなどを抑制していく必要もあります。

とはいえなかなか診療の質を一定にしていくこと、質を維持、向上させていくこと、さらに経営的にも良好な対応を行うことは、とても難しいことと聞きます。診療にはそれぞれの病院のやりかた、実際にそれを行う医師の判断が大きく関与しますし判断を行う医師も人ですから様々な影響を受ける可能性があります。

どのような診療方針で行うか、どのような検査を行い薬を投与するか、どういったケアを行うか、それを最適化するのは患者の症状も多様ですから非常に難しいことになるわけです。さらに、それを経営面から見ても最適にするのはさらに困難です。目の前の患者に対して、まず重要なことは、その患者を直すことです。そのときに行う様々な処置について経費的に無駄のないかどうかを考えることはどうしても優先度の低いこととなります。

もちろん、できるだけ複合的な視点から診療を最適化するための努力は行われており、診療方針を検討、決定するカンファレンスなどをチームとして行うことなどにより様々な観点から検討して、より最適な診療を行うために行われています。より無駄なく効果的な医療を求める仕組みとして、特定機能病院などを主として行われているDPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System:診断群分類に基づいて評価される入院1日あたりの定額支払い制度)などもその一つと言って良いかと思います。

DPC/PDPSは、乱暴にいえば、入院などが必要なある病気について入院の標準的な診療を根拠となるデータから想定し、その場合に病院に支払われる診療報酬を一定額にするといったような制度と言って良いと思います。このやり方だと、必要以上に短期あるいは長期の入院などを行うと、病院側にとって採算の悪い方向となることもあり、より適正と考えられてる診療の有り様へ誘導する効果があるわけです。

もう一つ、適切で質の高い医療を提供するための方策とされているのが、病院の関係者以外にはあまりなじみのないクリニカルパス(クリティカルパス)という手法であると思います。この考え方は、診療について「マネジメント」を適用した、といえるものです。(ちなみにこの呼称については、学会等で「クリニカルパス」と統一されたようですが、現在でも初期の呼称である「クリティカルパス」を使用していることがあります。

こういうと、工程管理をする際のPART(Program Evaluation and Review Technique)で出てくる「時間的に余裕のない経路」の方を想起する人も多いと思いますが、そのような混乱を避ける意味もあって、現在では「クリニカルパス」の方を使用しているようです。

「クリニカルパス」は、同学会で次のように定義されています。
「患者状態と診療行為の目標、および評価・記録を含む標準診療計画であり、標準からの偏位を分析することで医療の質を改善する手法」少し言い回しが難しいですが、これまた乱暴にいえば、「症状、実施する処置などにより、あらかじめ標準的は診療計画を決めておき対応するやり方」といっていいかと思います。

クリニカルパスを適用した場合、その計画に沿って対応を行いますが、計画の想定を超えた状況となった場合は標準から離れて随時対応を行うような仕組みとなっています。そのときの状況をきちんと記録しておき、その対応などから標準的な方法をブラッシュアップし、その標準をより質の高いものにしていくということも行います。これはPDCAサイクルによるマネジメント手法そのものではないでしょうか。

このやり方、よく、「医療の質を低下させる」とか「画一的で質の低い診療となってしまう」といった批判をされることもあるようですが、標準でない場合の判断基準、対応などもきちんと示されているので決してそういうものではないように思います。むしろ、それによって効率性も生まれ、データによって医療の質は向上しますし、標準的な方法は十分な検討を複数のスタッフによって行われ、経営的な観点からも検討されるため無駄の少ない対応ができるものです。

また、この「クリニカルパス」は電子化、システム化が非常に効果的です。蓄積されたデータを分析する際にも、最初からデータ化されていれば非常にやりやすく、複雑な分析でなくとも容易に問題点を見いだすことが可能となります。副次的な要素ですが、クリニカルパスでは患者用の説明シート(診療の流れや内容を時系列で示した日程表のようなもの)も作成するので、治療を受ける側にも、全体の進行がわかりやすいシートで提供され、全体や次にどういったことを行うかがわかることは大きなメリットです。病院情報システムを提供しているベンダーも、この部分の実装についていろいろと努力を行っており、だんだんと使えるものもでてきているようです。(高額ですが)

病院情報システムでの実装は、検査、診療、投薬、看護、食事そのほか多くの要素を含む横断的な計画表になるので、それらのサブシステムとの整合をとった実装を行うのはなかなか大変ですが、今後、より使いやすいシステムが開発され、分析などが手軽に(そして安価に)できるようなものがあれば、医療の質の向上、効率の向上などに非常に役に立つことだろうなと思います。

このクリニカルパス、現在クリニカルパス学会の理事長に就任している副島秀久氏が病院長である済生会熊本病院において進んだ取り組みがなされていますし、その他学会で活発な報告をする病院も多くなってきています。

わかりやすいチュートリアルなども開催されるので、是非、そういった場にいくなどして、見識を深めていただくと良いと思います。そうすることで、診療に関してより深い理解を得られるのではないでしょうか?

Adobe® Reader®

PDFファイルの閲覧には、Adobe® Reader®が必要です。

Adobe® Reader®のダウンロード

お問い合わせ